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万葉歌手、辻友子のブログへようこそ! http://tomoko.ciao.jp
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★ 隠口の 長谷の山 青幡の

  忍坂の山は 走出の 宜しき山の

  出で立ちの 妙しき山ぞ あたらしき

  山の 荒れまく惜しも


★ こもりくの はせのやま あおはたの

  おさかのやまは はしりでの よろしくやまの

  いでたちの くはしきやまぞ あたらしき

  やまの あれまくをしも


★ 隠国の長谷の山である、青幡の如き

  忍坂は山は、走り出る形が美しい山よ。

  大切な山の、荒れゆくことがおしいよ

         巻13-3331

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★ 隠口の 泊瀬の川の 上つ神

  鵜を 八頭潜け 下つ瀬に

  鵜を八頭潜け 上つ瀬に

  年魚を食はしめ 下つ瀬に

  鮎を食はしめ  麗し妹に

  鮎を惜しみ  投ぐる箭の

  遠離り居て  思ふそら

  安けなくに  嘆くそら

  安けなくに  衣こそば

  それ破れぬれば 継ぎつつも

  またも合ふと言うへ

  玉こそは 緒の絶え塗れば

  括りつつ  またも合ふ意へ

  玉こそは  緒の絶えぬれば

  括りつつ  またも合ふと意へ

  またも逢えぬものは 妻にしありけり


★ こもりくの はつせのかわの

  かみつせに  うをやつかづけ

  しもつせに  うをやつかづけ

  かみつせに  あゆをくはしめ

  しもつせの  あゆをくはしめ

  うるわしいもに あゆををしみ

  なぐるさまの  とほざかりて

  おもふそら  やすけなくに

  なげくそら  やすけなくに

  きぬこそば  それやぶれぬれば

  つぎつつも  またもあふといへ

  たまこそは  をのたえぬれば

  くくりつつ  またもいふといへ

  またもあはぬものは つまにしありけり

★ 隠国の泊瀬の川の、上流の瀬に鵜を

  たくさんもぐらせ、下流の瀬に鮎を

  くわえさせ、くわしー美しい妻のために

  鮎を大切にする、そんないとしい妻から

  遠く射る箭のように 遠く離れていて、

  物を思う身を安らかなく、嘆く身を

  穏やかではないのに 衣こそは

  さあ、破れてしまっても継いでまた

  合うという、玉こそは紐が切れても

  しばってまた合うと言う。

  だのにふたたび逢えないものは

  妻なのだなあ

     巻13-3330

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★ 磯城島の 大和の国の いかさまに

  思ほしめせか つれも無き 城上に

  大殿を 仕へ奉りて 殿隠り

  隠り坐せば  朝には 召して

  使はし 夕には 召して 

  使はししつかはしし 舎人の子らは

  行く鳥の 群がりて持ち あり待てど

  召し賜ねば 剣刀 磨ぎし心を

  天雲に 思うひはぶらし 展転び

  ひづち泣けども 飽き足らぬかも


★ しきしまの やまとのくにに いかさまに

  おもほしせめか  つれもなき きじょうに

  だいでんを つかへまつりて でんこもり

  かくりざせば  あしたには めして

  つかはし  ゆふには めして

  つかはししつかはしし  とねりのこらは

  いくとりの むらがりもちて ありまてど

  めしたまわねば つるぎたち とぎしこころを

  あまぐもに おもうひは てんころび

  ひづちなけども あきたらぬかも

★ 磯城島の大和の国に、どうお考えになったか、

  何のゆかりもない城上に、宮として御殿の

  お作り申し上げ殿ごもりにいらっしゃるので
  
  朝にもお召し使になり、夕べにもお召し使い

  になり、お使いになった舎人の者たちの

  空飛ぶ鳥のように群がって待ち、待ち続ける

  お召しにならないので、剣太刀のように

  磨いた利心を、今は天雲の彼方に散らし

  捨てて、身もだえして涙に泣き濡れる

  けれども、なお心は休まらないよ

     巻13-3326

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★ つのさはふ いしむらのいへに しろたへの

    かかれるゆきは  おおゆきなのに


★角さわる石村の山に白布の如くかかっている雲は

  わが大君なのかなあ

      巻13-3325

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★ 懸けまくも あやに恐し 藤原の

  都しみみに 人はしも 満ちてあれども

  君はしも  多く坐せど 行き向かふ

  年の緒長く 仕へ来し 君の御門

  天の如  仰ぎて見つ 畏けど

  思ひたのみて 何時しかも 日足らしまつて

  十五月の 満しけむと わが思へる 

  皇子の命は 春されば うえつきが上の

  遠つ人 松の下道ゆ 登らして 国見あそばし

  九月の 時雨の秋は 大殿の 砌しみみに

  露負ひて 靡ける萩を 玉襷 懸けて偲はし

  み雪ふる 冬の朝は 刺楊 根張梓を

  御手に 取らしたまひて 遊ばしし

  わが大君を 烟立つ  春の日暮し

  真澄鏡 見れど飽かねば 万歳に

  かくしもがもと 大船の ふり放け見れば

  白栲に 飾りまつりて うち日さす

  宮の舎人も 栲の穂の 麻衣着れば

  夢かも 現かもと 曇り夜の

  迷へる間に 麻裳よし 城上の道ゆ

  角さはふ  石村の見つつ 神葬り

  葬り奉れば 行く道の たづきを知らに

  思へども  しるしを無し 嘆けども

  奥処に無み 御袖に 行き触れし松を

  言問はぬ 木にはあれども あらたまの

  立つ月ごとに 天の原に ふり放け見つつ

  玉襷 懸けて偲はむ 畏かれども

★ かけまくも あやにかしこし ふじはらの

  みやこしみみに ひとは みちてあれども

  きみはしも おおくいませど ゆきかふ

  としのをながく つかへこし きみのみかども

  てんのごと あおあぎてみつつ かしこけど

  おもひおたのみて いつしかも ひたらしまつりて

  もちつきの たたはしけむと わがもへる

  みこのみことは はるされば うえつきがうへの

  とおつひと まつのしたぢゆ のぼらして

  くにみあそばし ながつきの しぐれのあきは

  おほとのの みぎりしみみに つゆおひて

  なびけるはぎを たまだすき かけてしのはし
  
  みゆきふる ふゆのあしたは さしやなぎ

  ねはりあづさに おほみて とらしたまひて

  あそばしし わがおおきみを けぶりたつ

  はるのひぐらし まそかがみ みれどあかねば

  よろづよに かくしもがもと おおふねの

  たのめるときに なきことふ めかもまとへる

  おおとのを ふりさけみれば しろたへに

  かざりまつりて うちひさす みやのとねりも

  たへのほの  あさぎぬきれば いめかも

  うつつかもとくもりよの まとへるほとに

  あさもよし きのへのみゆ つのさはふ

  いはれをみつつ かみはふるり はふりまつれば

  ゆくみちの  たづきをしらに おもへども
  
  しるしをなみ  なげけども おくかをなみ

  おほみそで ゆきふれしまつを こととはぬ

  きにはあれども あらたまの たつつきごとに

  あまのはら ふりさけみつつ たまだすき

  かけてしのはな かしこかれども

★ 口で申すも何ともおそれ多い。藤原の都には

  たくさんの人が満いているが、皇う方も

  多くおられるが、去りまた来る年月を、長く仕えて

  来た、このわが君の御殿を、天上のように

  仰ぎ見つづけて、恐れ多くはあるが、お頼りに

  申し上げて、成人をなさったて、望月のように

  満ちたりそうなさるのはいつだろう、

  早くそうなさってほしいと思ってきた。

  その皇子様は、春になると、殖槻のほとりの

  遠い人のを待つ松の下見を通って山に登り

  国見をなさり、九月の時雨降る秋の

  御殿にの砌に、一面に霧をのせて

  靡く萩を、玉襷をかけるごとく

  心のかけてお偲びになり、み雪降る

  冬の朝は、刺木の楊の根を張る

  如く弦を張った梓弓をお手に取って

  狩りをなさった。わが大君は

  空が曇りこめる春の日とて

  一日中真澄鏡のように見飽き

  ないので、永遠の後代まで

  かくあってほしいと、大船の

  如く頼りにしていた時に、

  泣いて語るまでに目も迷った
 
  のだろうかと、御殿をふり

  仰いで見ると白布で、蔽い

  お飾りし、日が輝く宮の

  舎人たちも、真っ白で麻の

  喪服たちを着ているので、

  夢だろうか現実だろうかと、

  曇りの夜のように心が

  迷っている間に、麻の

  裳もよい城上の道を通って

  角さわる石村を見ながら、

  神々しく神葬りにお送り

  申し上げる。私はどう道を

  行くか、その方法も知らず

  いかに思ったとてその甲斐が

  ないので嘆きの果ても知らず

  大君の袖が行きふれた松を

  ことばを語らぬ木ではあるにしても

  あら玉の月を代わるたびに

  天上にふり仰ぎ見つつ、玉襷のように

  心にかけてお慕いしよう。

  恐れ多くはあるが

        巻13-3324

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