★　紀の国の　浜に寄るとふ　鰒珠

　　拾はむといひて　妹の山　背の山越えて

　　行きし君　何時来まさむと　玉桙の

　　道に出で立ち　夕トを　わが問ひしかば

　　われに告らく　吾妹子や　汝が待つ君は

　　沖つ波　来寄する白珠　辺つ波の

　　寄する白珠　求むこそ　君が来まさぬ

　　拾ふとそ　君は来まさぬ　久にあらば

　　今七日だみ　早くあらば　今二日だみ

　　あらむとそ　君は聞しし　な恋ひそ吾妹子

★　きのくにの　はまによるとふ　あはびたま

　　ひろはむといひて　いものやま　せのやまこえて

　　いきしきみ　いうきまさむと　たまほこの

　　みちにいでたち　いつきまさむと　たまほこの

　　みちにいでたち　　ゆうとを　わがとひしかば

　　われにのらく　わぎもこや　ながまつきみは

　　ひろふとそ　きみはきまさぬ　ひさにあらば

　　いまなのかだみ　はやくあらば　いまふつかなみ

　　あらむとそ　きみはきこしし　なこひそわぎもこ

★　紀の国の浜に寄るという真珠を、拾おうといって

　　妹の山背の山を越えていったあなたが、いつ帰って

　　いらしゃることだろうと玉桙の道に出で立ち、「吾妹子よ、

　　お前が待つあの人はー沖の波や辺つ波が寄せて来る白珠

　　を探していて、帰っていらしゃらない。拾っていて帰って

　　いらっしゃらない「帰りまでは遅ければ七日ほど早ければ

　　、早ければ二日ほどだろう」とあの人はおっしゃていた。

　　だからそれほど恋こがれな、吾妹よ」と言ふ

　　　　　　巻13－3318

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★うまかはば　いもかちならむ　よしゑやし

　　いしはふむとも　あはふたりでゆく


★　馬を買ったら、ままよ、石を踏んで辛く

　　あっても、私は二人で歩いてゆきたい

　　　　　巻13－3317

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★　ますみかがみ　もてれどわれは　われはしるしなし

　　　きみはごこうより　　なづみいく

★　真澄鏡を持っているけれども私はもち甲斐もない、

　　あなたが歩いて、苦労していくのを見ると

　　　　巻13-3316

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★　いずみがわ　わたせふかみ　わがせこが

　　　たびゆきころも　　　ぬれにけるかも


★　泉川の渡り瀬はが深いので、わが夫の

　　旅行く君はぬれてしまったなあ

　　　　　　巻13－1315

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★　つぎよふ　　山城道を　他の夫が馬で行くのに

　　わが夫は歩いて行くので、見るたびにひどく

　　泣かれてしまう。それを思うと心が痛い。

　　たらちねの　母の形見として、私の持っている

　　真澄鏡に蜻蛉領巾をそえて、ともに背負って

　　市へもっていって、馬を買えよ、わが夫よ


★　つぎよふ　やましろみちを　ほかのおっとが

　　うまでいくのに　わがあるいていくので

　　なかれてしまう　　それをおもうとこころがういたい

　　たらちねの　ははのかたみとして　わたしのもっている

　　ますみかがみにあきづひれをそえて　ともにせおって

　　しへもっていって、うまをかえよ　わがおっとよ

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