★まいとしに　　きなくもののゑ　ほととぎす

　　きけばしのはく　　あはぬひもおおい

★毎年やっと来ては鳴くものの、ほととぎす聞くと

　心ひかれることよ。

　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　巻19－4168

[0回]

★　ときごとに　　いやめづらしく　　さくはなを

　　　おりもおらずも　　みらしくよしも

★　毎年やって来ては鳴く時くものの、ほととぎすを鳴くときに

　　なっていないいが、感興のままに、あらかじめ作った

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻19－4167

[0回]

★　時ごとに　いや珍しく　八千種に

　　草木花咲き　鳴く鳥の　声も変はらぬ

　　耳に聞き　眼に見るごとに　うち嘆き

　　萎えうらびれ　しのひつつ　ありける間に

　　木の晩の　　四月し立てば　夜隠りに

　　鳴くほととぎす　古ゆ　語り継ぎつる

　　鶯の　現に真子かも　菖蒲草　花橘を

　　少女らが　珠貫くまでに　茜さす

　　昼はめしらしに　あしひきの

　　八峰飛び越え　ぬばたまの

　　夜はすがらに　　暁の

　　月に向かひて　　行き還り

　　鳴き響むれど　　いかに飽き足らむ

★ときごとに　　いやめずらしく　　やちぐさに

　くさきはなさき　　なくとりの　　こへもかはらぬ

　なえうらびれ　　しのひつつ　　ありけりまに

　このばんの　　うづきしたてば　　よごもりに

　うぐひすの　　うつつにまこかも　　あやめぐさ　　

　はなたちばなを　　をとめらが　　たまぬくまでに

　あかねさす　　　ひるはめしらに　　あしひきの

　やつをとびこへ　　ぬばたまの　　よるはすがらに

　あかときの　　　つきにむかひて　　ゆきかへり

　なきとよむれど　　いかにあきたらむ

★四季それぞれに、一層珍しくさまざまに　草木の花が咲き

　鳥の鳴き声も違って思われる。それらを耳に聞き目に見る度に

　、溜息をつき心もしおれて慕って来たところ、木の下が暗くなる

四月になると、夜の闇の中に鳴くほととぎすよ。昔から言い伝えてきた

鶯のまことの子よ。菖蒲や花橘を少女たちが珠に通す頃まで

茜いろの昼は一日中あしひきの山々よ飛び越え、ぬばたまの夜は

一晩中鳴きとおして、夜明けの月に向かって飛びかけり、鳴き

しきるのだけれども、　飽きることとてない

　　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　巻19－4166

[0回]

★　ますらをの　　なをしたつべし　　のちのよに

　　　　ききつぐひとも　　かたりつづがね


★　大夫はりっぱな名を立てるべきだ。後の

　　大に語り継がれた人々が、また語り継ぐように

　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻19－4165

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★ちちの実の　父の命

　柞葉の　　母の命

　おほらかに　情尽くして

　思ふらむ　　その子もなれやも
　　
　大夫や　　空しくあるべき

　梓弓　　末振り起こし

　投矢持ち　千尋射渡し

　剣大刀　　腰に取り佩き

　あしひきの　　八峰踏み越え

　さし任くる　　情障らず

　後の世の　　　語り継ぐべく

　名をたつべしも

★　ちちのみの　ちちのいのち

　　ははそばの　　ははのいのち

　　おほらかに　　こころつくして

　　おもふらむ　　そのこなれやと

　　ますらをや　　むなしくあるべき
　　
　　なげやもち　　ちひろわたし

　　つるぎたち　　こしにとりはき
　
　　あしひきの　　やつをふみこえ

　　さしまくる　　こころさわらず

　　のちのよも　　　かたりつぐべく

　　なをたつべしも

★ちちの実の父君やははそ母君が通り

　いっぺんに心配しているような、そんな

　子ではどうしてあろう。大夫は空しくて

　生きてはいけない。梓弓の末を振りたて

　投げ矢によって遠く射通し、剣大刀を腰に

　帯び、あしひきの山を幾つも越えてここに　　

　任ざられた心を晴れやかに、後世に語り

　つがれるような名声を立てるべきである

　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　巻19－4164


　　

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