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★ 天地の 遠き初めよ
世の中は 常なきものと
語り継ぎながらへ来たれ
天の原 振り放け見れば
照る月も 満ち欠けにけり
あしひきの 山の木末の
春されば 花咲き匂う
秋づけば 露霜負ひて
風交じり 黄葉散りけり
うつせみの かくもならし
紅の 色も移ろい
ぬばたまの 黒髪変はり
朝の笑み 暮変はらひ
吹く風の 見えぬがごとく
逝く水の 留まるがごとく
常もなく 移ろひ見れば
にはたづみ 流るる涙
止みかねつも
★あめつちの とおきはじめよ
よのなかは つねなきものと
かたりつぎながらきたれ
あまのはら ふりさけみれば
てるつきも みちかけにけり
あしひきの やまのこぬれも
はるされば はなさきにほひ
あきづけば つゆしもおひて
かぜまじり もみぢちりけり
うつせみの かくのみならし
くれないの いろもうつろひ
ぬばたまの くろかみかはり
あさのえみ ゆふべかはらぬ
ふくかぜの みえぬごごとく
ゆくみずの とまらぬごとく
つねもなく うつろふみれば
にはたづみ ながるるなみだ
止みかねつも
★ 天地の遠い昔から、世間には無常だと
語り継がれてきたことです。
天上も振り仰いで見ても、輝く月に
満ち欠けがある。あしひきの山の梢も
春になると美しく花が咲き、秋になると
露霜まけて風の中で黄葉が散って行く
現実の身もこうでしかないらしい。紅の
顔もやがて衰え、ぬばたまの黒髪変わり
朝の笑顔も夕方には変わってしまう。
目に見えない風のように、流れ行く水が
留まらないように、世間の者が無常に
移ってゆくのを見ると、にわずみとなって
流れる水がとめどないことです
大友家持
巻19-4160
世の中は 常なきものと
語り継ぎながらへ来たれ
天の原 振り放け見れば
照る月も 満ち欠けにけり
あしひきの 山の木末の
春されば 花咲き匂う
秋づけば 露霜負ひて
風交じり 黄葉散りけり
うつせみの かくもならし
紅の 色も移ろい
ぬばたまの 黒髪変はり
朝の笑み 暮変はらひ
吹く風の 見えぬがごとく
逝く水の 留まるがごとく
常もなく 移ろひ見れば
にはたづみ 流るる涙
止みかねつも
★あめつちの とおきはじめよ
よのなかは つねなきものと
かたりつぎながらきたれ
あまのはら ふりさけみれば
てるつきも みちかけにけり
あしひきの やまのこぬれも
はるされば はなさきにほひ
あきづけば つゆしもおひて
かぜまじり もみぢちりけり
うつせみの かくのみならし
くれないの いろもうつろひ
ぬばたまの くろかみかはり
あさのえみ ゆふべかはらぬ
ふくかぜの みえぬごごとく
ゆくみずの とまらぬごとく
つねもなく うつろふみれば
にはたづみ ながるるなみだ
止みかねつも
★ 天地の遠い昔から、世間には無常だと
語り継がれてきたことです。
天上も振り仰いで見ても、輝く月に
満ち欠けがある。あしひきの山の梢も
春になると美しく花が咲き、秋になると
露霜まけて風の中で黄葉が散って行く
現実の身もこうでしかないらしい。紅の
顔もやがて衰え、ぬばたまの黒髪変わり
朝の笑顔も夕方には変わってしまう。
目に見えない風のように、流れ行く水が
留まらないように、世間の者が無常に
移ってゆくのを見ると、にわずみとなって
流れる水がとめどないことです
大友家持
巻19-4160