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★あらたまの 年ゆき更り 春されば
花のみにほふ あしひきの 山下響み
落ち激つ 流るさき田の 川の瀬に
年魚子さ走る 島つ鳥 鵜飼ともなへ
篝さし なづさひ行けば 吾妹子が
形見がてらと 紅の 八入に染めて
寄せたる 衣の裾も とほりて濡れぬ
★あらたまの としゆきさはり はるされば
はなのみにほふ あしひきの やましたとよみ
あゆこさはしる しまつとり うかいともなへ
かがりさし なづさひゆけば わぎもこが
かたみがてらと くれなひの やしおにそめて
よせたる ことものすそも とほりてぬれぬ
★あらたまの年が 改まって春になると、花が一面に美しい
あしひきの山の、その下に音を響かせて落ち激ち流れる
へき田川の瀬には、年魚の子が走りまわる。
そこで島つ鳥鵜飼の者を連れ燃やしつつ流れを歩いて行くと
わが妻が 形見にもとて 紅色に濃く染めて送ってくれた
衣も、裾が濡れとおることです
大友家持
巻19-4156
花のみにほふ あしひきの 山下響み
落ち激つ 流るさき田の 川の瀬に
年魚子さ走る 島つ鳥 鵜飼ともなへ
篝さし なづさひ行けば 吾妹子が
形見がてらと 紅の 八入に染めて
寄せたる 衣の裾も とほりて濡れぬ
★あらたまの としゆきさはり はるされば
はなのみにほふ あしひきの やましたとよみ
あゆこさはしる しまつとり うかいともなへ
かがりさし なづさひゆけば わぎもこが
かたみがてらと くれなひの やしおにそめて
よせたる ことものすそも とほりてぬれぬ
★あらたまの年が 改まって春になると、花が一面に美しい
あしひきの山の、その下に音を響かせて落ち激ち流れる
へき田川の瀬には、年魚の子が走りまわる。
そこで島つ鳥鵜飼の者を連れ燃やしつつ流れを歩いて行くと
わが妻が 形見にもとて 紅色に濃く染めて送ってくれた
衣も、裾が濡れとおることです
大友家持
巻19-4156
★あしひきの 山坂越えて ゆき更る
年の緒長く しなざかる 越にし住めば
大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと
心には 思ふものから 語り放け 見放くる人眼
乏しみと 思し繁し そこゆゑに 情和ぐやと
秋づけば 萩咲き匂ふ 石瀬野に 馬だき行きて
遠近に 鳥踏み立て 白塗の 小鈴もゆらに
あはせ遣り ふり放つ見つつ いきどほる
心の中を 思ひ伸べ うれしびながら
枕づく 妻家のうちに 鳥座結ゆ
据ゑてそわが飼ふ 真白斑の鷹
★あしひきの やまさかこへて ゆきかはる
としのをながく しなざかる こしにしすめば
おほきみの しきますくには みやこをも
こことおなじと こころには おもふものから
かたりさけ みさくるひとめ ともしみと
おもひしげし そこゆゑに こころなぐやと
あきづけば はぎさきにほふ うまだきゆきて
をちこちに とりふみたて しらぬりの
こすずもゆらに あはせやり ふりさけみつつ
いきどほる こころのうちを おもひなべ
うれしびながら まくらづく つまやのうちに
とくらゆひ すゑてそわがかふ ましらふのたか
★あしひきの山や坂を越えて来て めぐり来る
年月長く、しなざかる越の国に住んでいるので
天皇のお治めになる国土は 都もここも同じだと
思っているものの、人々と語りあったり会ったり
することも遠く稀だと思うと物思いが絶えない。
そこで少しは心が慰められるかと、秋になると萩の花が
美しい石瀬野に 馬を飼ってあちこちに鳥を追い立て
白銀の小鈴の音さやかに鷹を飛びたたせ、その姿を
遠く目で追いながら鬱積した心中を晴らし、
それを楽しみつつ、枕づく妻やの中に鳥屋を作り
据ゑて飼うことです。純白の斑文の鷹を
大友家持
巻19-4151
年の緒長く しなざかる 越にし住めば
大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと
心には 思ふものから 語り放け 見放くる人眼
乏しみと 思し繁し そこゆゑに 情和ぐやと
秋づけば 萩咲き匂ふ 石瀬野に 馬だき行きて
遠近に 鳥踏み立て 白塗の 小鈴もゆらに
あはせ遣り ふり放つ見つつ いきどほる
心の中を 思ひ伸べ うれしびながら
枕づく 妻家のうちに 鳥座結ゆ
据ゑてそわが飼ふ 真白斑の鷹
★あしひきの やまさかこへて ゆきかはる
としのをながく しなざかる こしにしすめば
おほきみの しきますくには みやこをも
こことおなじと こころには おもふものから
かたりさけ みさくるひとめ ともしみと
おもひしげし そこゆゑに こころなぐやと
あきづけば はぎさきにほふ うまだきゆきて
をちこちに とりふみたて しらぬりの
こすずもゆらに あはせやり ふりさけみつつ
いきどほる こころのうちを おもひなべ
うれしびながら まくらづく つまやのうちに
とくらゆひ すゑてそわがかふ ましらふのたか
★あしひきの山や坂を越えて来て めぐり来る
年月長く、しなざかる越の国に住んでいるので
天皇のお治めになる国土は 都もここも同じだと
思っているものの、人々と語りあったり会ったり
することも遠く稀だと思うと物思いが絶えない。
そこで少しは心が慰められるかと、秋になると萩の花が
美しい石瀬野に 馬を飼ってあちこちに鳥を追い立て
白銀の小鈴の音さやかに鷹を飛びたたせ、その姿を
遠く目で追いながら鬱積した心中を晴らし、
それを楽しみつつ、枕づく妻やの中に鳥屋を作り
据ゑて飼うことです。純白の斑文の鷹を
大友家持
巻19-4151