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★あしひきの 山坂越えて ゆき更る
年の緒長く しなざかる 越にし住めば
大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと
心には 思ふものから 語り放け 見放くる人眼
乏しみと 思し繁し そこゆゑに 情和ぐやと
秋づけば 萩咲き匂ふ 石瀬野に 馬だき行きて
遠近に 鳥踏み立て 白塗の 小鈴もゆらに
あはせ遣り ふり放つ見つつ いきどほる
心の中を 思ひ伸べ うれしびながら
枕づく 妻家のうちに 鳥座結ゆ
据ゑてそわが飼ふ 真白斑の鷹
★あしひきの やまさかこへて ゆきかはる
としのをながく しなざかる こしにしすめば
おほきみの しきますくには みやこをも
こことおなじと こころには おもふものから
かたりさけ みさくるひとめ ともしみと
おもひしげし そこゆゑに こころなぐやと
あきづけば はぎさきにほふ うまだきゆきて
をちこちに とりふみたて しらぬりの
こすずもゆらに あはせやり ふりさけみつつ
いきどほる こころのうちを おもひなべ
うれしびながら まくらづく つまやのうちに
とくらゆひ すゑてそわがかふ ましらふのたか
★あしひきの山や坂を越えて来て めぐり来る
年月長く、しなざかる越の国に住んでいるので
天皇のお治めになる国土は 都もここも同じだと
思っているものの、人々と語りあったり会ったり
することも遠く稀だと思うと物思いが絶えない。
そこで少しは心が慰められるかと、秋になると萩の花が
美しい石瀬野に 馬を飼ってあちこちに鳥を追い立て
白銀の小鈴の音さやかに鷹を飛びたたせ、その姿を
遠く目で追いながら鬱積した心中を晴らし、
それを楽しみつつ、枕づく妻やの中に鳥屋を作り
据ゑて飼うことです。純白の斑文の鷹を
大友家持
巻19-4151
年の緒長く しなざかる 越にし住めば
大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと
心には 思ふものから 語り放け 見放くる人眼
乏しみと 思し繁し そこゆゑに 情和ぐやと
秋づけば 萩咲き匂ふ 石瀬野に 馬だき行きて
遠近に 鳥踏み立て 白塗の 小鈴もゆらに
あはせ遣り ふり放つ見つつ いきどほる
心の中を 思ひ伸べ うれしびながら
枕づく 妻家のうちに 鳥座結ゆ
据ゑてそわが飼ふ 真白斑の鷹
★あしひきの やまさかこへて ゆきかはる
としのをながく しなざかる こしにしすめば
おほきみの しきますくには みやこをも
こことおなじと こころには おもふものから
かたりさけ みさくるひとめ ともしみと
おもひしげし そこゆゑに こころなぐやと
あきづけば はぎさきにほふ うまだきゆきて
をちこちに とりふみたて しらぬりの
こすずもゆらに あはせやり ふりさけみつつ
いきどほる こころのうちを おもひなべ
うれしびながら まくらづく つまやのうちに
とくらゆひ すゑてそわがかふ ましらふのたか
★あしひきの山や坂を越えて来て めぐり来る
年月長く、しなざかる越の国に住んでいるので
天皇のお治めになる国土は 都もここも同じだと
思っているものの、人々と語りあったり会ったり
することも遠く稀だと思うと物思いが絶えない。
そこで少しは心が慰められるかと、秋になると萩の花が
美しい石瀬野に 馬を飼ってあちこちに鳥を追い立て
白銀の小鈴の音さやかに鷹を飛びたたせ、その姿を
遠く目で追いながら鬱積した心中を晴らし、
それを楽しみつつ、枕づく妻やの中に鳥屋を作り
据ゑて飼うことです。純白の斑文の鷹を
大友家持
巻19-4151