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★ 霍公鳥 来鳴く五月に
咲きにほふ 花橘の
香ぐわしき 親の御言
朝暮に 聞かぬ日もまねく
天離る 夷にし居れば
あしひきの 山のたをり
立つ雲を 外のみ見つつ
嘆く空 安けなくに
思ふそら 苦しきものを
奈呉の海人の 潜き取るとふ
真珠の 見が欲し御面
直向ひ 見む時までは
松柏の 栄えいまさね
尊き吾が君
★ほととぎす きなくさつきに
さきにほふ はなたちばなの
かぐわしき おやのみこと
あさよひに きかぬひまねく
あまざかる ひなしをれば
あしひきの やまをたよりに
たつくもを よそのみつつ
なげくそら やすけなくに
おもふそら くるしきものを
なごのあまの かづきとるとふ
しらたまの みがほしみおもわ
ただむかひ みむときまでは
まつかへの さかえいまさね
たふときあがきみ
★霍公鳥がやって来て鳴く五月に
美しく咲く橘の花のように
かぐわしい親のお言葉を
聞かない日も多く天離る
夷にいるので あしひきの
山の窪みに立つ雲を
外ながら眺めつつ、嘆息もつく
見も安らかならず、物思いする身も
辛いものを。奈呉の海の漁師が潜って
取る真珠のように見たいと願うお顔を
じかに拝見する日までは、松柏の如く
栄えておいで下さい。尊い母君よ。
大伴家持
巻19-4169
咲きにほふ 花橘の
香ぐわしき 親の御言
朝暮に 聞かぬ日もまねく
天離る 夷にし居れば
あしひきの 山のたをり
立つ雲を 外のみ見つつ
嘆く空 安けなくに
思ふそら 苦しきものを
奈呉の海人の 潜き取るとふ
真珠の 見が欲し御面
直向ひ 見む時までは
松柏の 栄えいまさね
尊き吾が君
★ほととぎす きなくさつきに
さきにほふ はなたちばなの
かぐわしき おやのみこと
あさよひに きかぬひまねく
あまざかる ひなしをれば
あしひきの やまをたよりに
たつくもを よそのみつつ
なげくそら やすけなくに
おもふそら くるしきものを
なごのあまの かづきとるとふ
しらたまの みがほしみおもわ
ただむかひ みむときまでは
まつかへの さかえいまさね
たふときあがきみ
★霍公鳥がやって来て鳴く五月に
美しく咲く橘の花のように
かぐわしい親のお言葉を
聞かない日も多く天離る
夷にいるので あしひきの
山の窪みに立つ雲を
外ながら眺めつつ、嘆息もつく
見も安らかならず、物思いする身も
辛いものを。奈呉の海の漁師が潜って
取る真珠のように見たいと願うお顔を
じかに拝見する日までは、松柏の如く
栄えておいで下さい。尊い母君よ。
大伴家持
巻19-4169