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★ この世で生きていると思っていた時に、手を携えて二人で見た、すぐ近くの堤にそびえる欅の木
のあちこちの枝に春の葉が一面に繁るように、思い恋した妻であったけれど、
末長くと頼んだ人であったのだけれど、この世の運命に背く事はできず、陽炎の燃える春の野に
純白の領巾に包まれて、朝鳥のように飛び立ち、落日のように姿を消してしまったので、妻が
形見にと残した幼子が乳を乞いて泣くたびに、与えるものも無く、男でないように、腋に抱えて
愛しき妻と二人で寝て、枕を共にした嬬屋の中で、昼は一日うらさびしく暮らし、夜は切なく
明かして、嘆いても、どうしようもなく、いくら恋慕っても、逢うてだてもなく、大鳥が、愛を交わす
あの山に、私の愛しい妻がいると、人が言うので、石を踏み分け、苦しみながらやってきた・・
しかし・・・何事も良くならない・・・生きていると思っていた妻が、玉がゆらめくようなほのかさの
中にも見えない事を思うと・・・・