★　はるはなの　うつろふまでに　あいみねば

　　　つきひよみつつ　　いもをまつらむぞ


★　春の花が散る時期までは逢えないので
　　
　、別れ住む月日を数えつつ妻は待っているだろうよ


　　　　　　　　　　巻１７－3982

[0回]

★　あしひきの　やまきかえりて　とおけども

　　　こころしいけば いめにみえつる


★　ぬばたまの夜の夢には空しく見えるけれども

　　恋心はやまないことです

　　　　　　巻17－3970

[0回]

★あらたまの　やまへだりて　とおけども

　　　こころしいけば　　いめにみえつつ

★　あらたまの年が改まるまで違わないので

　　心もしなえるように慕われることよ

　　　　　　　　　　　
　　　　　　巻176－3797

[0回]

★　妹もわれも　心は同じ　副へれど

　　いや懐しく　相見れば　常初花の

　　心ぐし　めぐみもなしに　愛しけやし

　　吾が奥妻　大君の　命畏み　あしひきの

　　山越えの行き　天離る　ひなをさめにと

　　別れ越し　その日の極み　あらたまの

　　年行き返り　春花の　移ろふまでに

　　相見ねば　甚もすべなみ　敷たへの

　　袖返しつつ　寝る夜落ちず　夢には見れど

　　現にし　直にあらねば　恋しけく　千重に積りぬ

　　近くあらば　帰りだにも　打ち行きて　妹が手枕に

　　指し交へて　寝ても来ましも　玉ほこの　路は遠く

　　関さへに　隔りて　あれこそ　よしゑやし　縁はあらむそ

　　霍公鳥　来鳴かむ　月に　いつしかも　早くなりぬる

　　卯の花の　にほへる山を　外のみも　振り放け見つつ

　　近江路の　い行き乗り立ちを　青丹よし　奈良の吾家に

　　ぬえ鳥の　うら嘆けしつつ　下恋ひに　思ひうらぶれ

　　門に立ち　夕占い問ひつつ　　吾を待つと　寝すらむ妹を

　　逢ひて早見む

★　いももわれも　こころはおなじ　たぐへれど

　　いやなつかしく　あひみれば とこはなつなに

　　こころぐし　めぐみもなしに　はしけやし

　　あがおくづま　おおきみの　みことかしこみ

　　あしひきの　やまこえぬいき　あまざかる　

　　ひなをさめにと　わかれこし　そのひのきはみ

　　あらたまのとしゆきかへり　はるはなの

　　うつろふまでに　あひみねば　いたもすべなみ

　　しきたへの　そでかへしつつ　ぬるよおちず

　　いめにはみれど　うつつにし　ただにあらねば

　　こひしけく　ちえにつもりぬ　ちかくあらば

　　かえりにただに　うちゆきて　いもがたまくら

　　さしかへて　ねてもこましを　たまほこの

　　みちはしとおく　せきさへに　へなりて

　　あれこそ　よしゑやし　よしあらむそ

　　ほととぎす　きなかむつきに　いつしかも

　　はやくなりぬる　うのはなの　にほへるは山を

　　うのはなの　　にほへるやまつきに

　　よそのみかも　　ふりさけみつつ

　　あふぢに　いゆきのりたち　あをによし

　　ならのわぎへに　ぬえとりの

　　うらなげけしつつ　したこひに

　　おもひうらびれ　かどにたち

　　ゆふけとひつ　　あをまつと

　　なすらむいもを　　あひてはやみむ

★　妻も私も心は同じである。いっしょに

　　いてもますますこころひかれ、顔を

　　見るといつも初花のように珍しく

　　、心いぶせく、恋に苦しむ事なく

　愛らしい、わが奥の心の妻よ。大君の

　御命令が恐れ多く、あしひきのやまを

　越え野を行き天遠いひなをおさめにと

　別れてきたその日に最後に、あらたまの

　年も改まり、春の花が散ってゆくまで

　逢うこともないので　何とも方法はなく

　敷たへの　袖を折り返しながら　寝る夜は

　いつも夢には、見えても直接は逢うことができないので

　、恋しさは幾重にも積った。都が近かったからちょっと

　帰ってでも行って、玉ほこの路をは遠く関所まで

　も隔てていることだ。ままよ、何かよい手段もあるころだろう

　ほととぎすが　来て鳴く月になるのはいつか。早くなって欲しい

　卯の花の美しく遠く見ながら、近江路を辿っていって、

　青丹美しい奈良の我が家に到り、ぬえ鳥のように下心に

　嘆きつつ、ぬえ鳥のように下心に嘆きつつ

　、心のに恋に侘しく思いつつ門にでては　

　夕占を問に出ては、夕占を問いながら

私を待っているのだろうか

　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　巻17－3978

[0回]

★あしがきの　ほかにも　きみがよりたし　

　　こひければこそ　いめにみえけれ


★　葦垣を　距てたあなたが寄り立って

　　慕って下さるからこそ、夢に見えたことです

　　　　　大伴家持

　　　　巻17－3977

[0回]