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★ おし照るや 難波の小江に 廬作り
隠りて居る 葦蟹の 大君召すと
何せむに 吾を召すらめや 笛吹と
吾を召すらめや 笛吹と 吾を召らめや
琴弾と 吾を召すらめや かもかくも
命浮けむと 今日今日と 飛鳥に到り
立てれども 置なに至り 策つかねども
都久野に到り 東の 中の門ゆ 参納り来て
命受くれば 馬にこそ ふもだしかくもの
牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の
もむ楡を 五百枝はぎ垂れ 天光るや 日の異に干し
さひづるや 唐臼に春き 庭に立つ 手臼につき
おし照るや 難波の小江の 初垂を 辛く垂れ来て
陶人の 作れる瓶を 今日行き 明日を取り持ち来
わが目らに 塩ぬり給ひ きたひ賞す 錯賞すも
★ おしてるや なにわのをえに いほつくり
なまりてをる あしがにを おおきみめすと
なにせむに わをめすらめや ふえふきと
わをめすらめや ことひきと わをめすらめや
かもかくも みことうけむと けふとけふと
あすかにいたり たてれども おくなにいたり
つかねども つくのにいたり ひむがしの
なかのみかどゆ まゐりきて みことうくれば
うまにこそ ふもだしかくもの うしにこそ
はなわひくれ あしひきの このかたやまを
もむにれを いほえはぎたれ あまてるや
ひのけにほし さひづるや からうすにつき
にわにたつ てうすにつき おしてるや
なにわのをえの はつたりを からくたれきれ
すゑひとの つくれるかめを けふいき
あすとりもちき わがめらに しおぬりたまひ
きたひはやすも きたひはやすも
隠りて居る 葦蟹の 大君召すと
何せむに 吾を召すらめや 笛吹と
吾を召すらめや 笛吹と 吾を召らめや
琴弾と 吾を召すらめや かもかくも
命浮けむと 今日今日と 飛鳥に到り
立てれども 置なに至り 策つかねども
都久野に到り 東の 中の門ゆ 参納り来て
命受くれば 馬にこそ ふもだしかくもの
牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の
もむ楡を 五百枝はぎ垂れ 天光るや 日の異に干し
さひづるや 唐臼に春き 庭に立つ 手臼につき
おし照るや 難波の小江の 初垂を 辛く垂れ来て
陶人の 作れる瓶を 今日行き 明日を取り持ち来
わが目らに 塩ぬり給ひ きたひ賞す 錯賞すも
★ おしてるや なにわのをえに いほつくり
なまりてをる あしがにを おおきみめすと
なにせむに わをめすらめや ふえふきと
わをめすらめや ことひきと わをめすらめや
かもかくも みことうけむと けふとけふと
あすかにいたり たてれども おくなにいたり
つかねども つくのにいたり ひむがしの
なかのみかどゆ まゐりきて みことうくれば
うまにこそ ふもだしかくもの うしにこそ
はなわひくれ あしひきの このかたやまを
もむにれを いほえはぎたれ あまてるや
ひのけにほし さひづるや からうすにつき
にわにたつ てうすにつき おしてるや
なにわのをえの はつたりを からくたれきれ
すゑひとの つくれるかめを けふいき
あすとりもちき わがめらに しおぬりたまひ
きたひはやすも きたひはやすも
★ 愛子の 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは
韓国の 虎といふ神を 生け取りに 八頭取り持ち来
その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に
四月と 五月の間に 薬猟 仕ふ時に あしひきの
この片山に 二つ持ちて いちひが本降る時に
梓弓 八つ手鋏み ひめ鏑 八つ手鋏 鹿待つと
わが居る時に さ牝鹿の 来立ち嘆かく たちまちに
われは死ぬべし 大君に われは仕えむ わが角は
御笠のはやし わが耳は 御墨のつぼ わが目らは
真澄の鏡 わが爪は 御弓の弓はず わが毛らは
御筆はやし わが皮は 御箱の皮に わが肉は
御膾はやし わが肝も み膾はやし わがみげは
御塩のはやし おうぬる奴 わが身一つに
七重花咲く 御塩のはやし おいぬる奴
わが身一つに 七重咲く 八重花咲くと
申し賞さね 申し賞さね
★いとこ なせのきみ をりをりて ものにいゆくとは
からくにの とらとふかみを いけどりに
やつとりもちき そのかわを たたみにさし
やへだたみ へぐりのやまに うづきと
さつきのあひだに くすりがり つかふるときに
あしひきの このかたやまに ふたつたつ
いちひがもとに あづさゆみ やつてばさみ
ひめかぶら やつてばさみ ししまつと
わがをるときに さをしかの きたちなげく
たちまちに われはしぬべし おおきみに
われはつかへむ わがつのは みかさのはやし
わがみみは みすみのつぼ わがめらは
ますみのかがみ わがつめは みゆみのゆはず
わがけらは みみふではやし わがかわは
みはこのかわに わがししは みなますはやし
わがきもも みなますはやし わがみげは
みしおのはやし おおぬるやっこ わがみひとつに
ななへはなさく やへはなさくと まをしはやさね
もうしはやさね
★慕わしい方々、お親しい皆さん、家にいつづけて
さてどこかへ出かけるとは、辛いこと、
韓国の虎といふ神を生捕りに八頭もとって
持って来て、その皮をを敷物に作って八重の
敷物を重ねる平群の山で四月と五月の間に
薬狩りを奉仕する時に、あしひきの、この片山に
二本立っているいちひの木の下で梓弓を八つか
かえ、鹿を待っている時に、鹿が、やって来て
嘆くことには、「すぐに私は死ぬでしょう。
死んだら大君にお仕え申しましょう。私の角は
御笠の材料、私の爪は御弓の弓はず、私の毛は
御筆の材料、私の皮は 御箱の皮に、私の肉は、
御ますの材料、私の胃は、御塩づけの材料。
年とってしまった奴であるわが身一つに
これほど七重咲く、八塩に花が咲くと
、大君に申し上げておほめください。申し上げて
申し上げておほめください」
・ひめ→割れ目
巻17-3885
韓国の 虎といふ神を 生け取りに 八頭取り持ち来
その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に
四月と 五月の間に 薬猟 仕ふ時に あしひきの
この片山に 二つ持ちて いちひが本降る時に
梓弓 八つ手鋏み ひめ鏑 八つ手鋏 鹿待つと
わが居る時に さ牝鹿の 来立ち嘆かく たちまちに
われは死ぬべし 大君に われは仕えむ わが角は
御笠のはやし わが耳は 御墨のつぼ わが目らは
真澄の鏡 わが爪は 御弓の弓はず わが毛らは
御筆はやし わが皮は 御箱の皮に わが肉は
御膾はやし わが肝も み膾はやし わがみげは
御塩のはやし おうぬる奴 わが身一つに
七重花咲く 御塩のはやし おいぬる奴
わが身一つに 七重咲く 八重花咲くと
申し賞さね 申し賞さね
★いとこ なせのきみ をりをりて ものにいゆくとは
からくにの とらとふかみを いけどりに
やつとりもちき そのかわを たたみにさし
やへだたみ へぐりのやまに うづきと
さつきのあひだに くすりがり つかふるときに
あしひきの このかたやまに ふたつたつ
いちひがもとに あづさゆみ やつてばさみ
ひめかぶら やつてばさみ ししまつと
わがをるときに さをしかの きたちなげく
たちまちに われはしぬべし おおきみに
われはつかへむ わがつのは みかさのはやし
わがみみは みすみのつぼ わがめらは
ますみのかがみ わがつめは みゆみのゆはず
わがけらは みみふではやし わがかわは
みはこのかわに わがししは みなますはやし
わがきもも みなますはやし わがみげは
みしおのはやし おおぬるやっこ わがみひとつに
ななへはなさく やへはなさくと まをしはやさね
もうしはやさね
★慕わしい方々、お親しい皆さん、家にいつづけて
さてどこかへ出かけるとは、辛いこと、
韓国の虎といふ神を生捕りに八頭もとって
持って来て、その皮をを敷物に作って八重の
敷物を重ねる平群の山で四月と五月の間に
薬狩りを奉仕する時に、あしひきの、この片山に
二本立っているいちひの木の下で梓弓を八つか
かえ、鹿を待っている時に、鹿が、やって来て
嘆くことには、「すぐに私は死ぬでしょう。
死んだら大君にお仕え申しましょう。私の角は
御笠の材料、私の爪は御弓の弓はず、私の毛は
御筆の材料、私の皮は 御箱の皮に、私の肉は、
御ますの材料、私の胃は、御塩づけの材料。
年とってしまった奴であるわが身一つに
これほど七重咲く、八塩に花が咲くと
、大君に申し上げておほめください。申し上げて
申し上げておほめください」
・ひめ→割れ目
巻17-3885