×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
PR
★ 妹もわれも 心は同じ 副へれど
いや懐かしく 相見れば 常初花に
心ぐし めぐもなしに 愛しけやし
吾が奥妻の 大君の 命畏み
あしひきの 山越え野行き
天離る ひな治めにと
別れ来し その日の極み
あらたまの 年行き返り
春花の移ろふまでに 相見ねば
いたもすべなみ しきたへの
袖返しつつ 寝る夜落ちず
夢には見れど現にし
直にあらねば恋しけく
千重に積もりぬ 近くあらば
帰りだにも 打ち生きて 妹が手枕に
指し交へて 寝ても来ましも玉ほこの
路はし遠く 関さへに 隔りて
あれこそ よしゑやし 縁はあらむそ
霍公鳥 来鳴かむ月に いつしかも
早くなりなむ 卯の花の
にほへる山を 外のみも
振り放け見つつ 近江路に
い行き乗り立ち 青丹よし
奈良の吾家の ぬえ鳥の
うら嘆けしつつ 下恋ひに
思ひうらぶれ 門に立ち
夕占問ひしつつ 吾を待つと
寝すらむ妹を 逢ひて早みむ
★ いももわれも こころはおなじ
たぐへれど いやなつかしく
あひみれば とこはつはなに
こころぐし めぐしもなしに
はしけやし あがおくづま
おおきみの みことかしこみ
あしひきの やまこえぬいき
あまざかる ひなをさめにと
わかれこし そのひのきはみ
あらたまの としゆくかへり
はるはなの うつろふまでに
あひみれば いたもすべなし
しきたへの そでかへしつつ
ぬるよおちず いめにはみれど
うつつにし ただにあらねば
こひしけく ちへにつもりぬ
ちかうあらば かへりだにも
うちゆきて いもがたまくら
さしかへて ねてもこましを
たまほこの みちはしとほく
せきさへにへなりて ありこそ
よしゑやし よしはあらむそ
ほととぎす きなかむつきに
いつしかも あやくなりなむ
うのはなの にほへるやまを
よそのみも ふりさけみつつ
あふみじに いゆきのりたち
あをによし ならのわぎへに
ぬえどりの うらなけしつつ
したこひに おもひうらぶれ
かどにたち ゆうけしつつ
あをまつと なすらむいもを
あひてはやみむ
★ 妻も私も心は同じである。いっしょにいても
ますます心引かれ、心いぶせると恋に苦しむ
こともなく愛らしい、わが心の奥の妻よ。
大君の御命令を恐れ多く、あしひきの
山を越え野を行き天遠いひなを治めにと別れて来たその日に
最後に、あらたまの年も改まり、春の花が散ってゆくまでに
逢うこともないので、何とも方法となくしきたへの
袖を折り返しながら寝る夜は、いつも夢に見えても
直接に逢うこともできないので恋しさは幾重に積もった
。都が近ったらちょっと帰ってでも行って、妹の手枕に
さしかわして寝てて来ようものを、玉ほこの路は遠く
関所まで間をへだてていることだ。
ままよ、何かよい手段があるだろうか。
霍公鳥が来て鳴く月になるのはいつか
。早くなって欲しい。卯の花は美しく
咲く山を外に見ながら近江路を辿って
いって、青丹美しい奈良の我が家を到り
ぬえ鳥のように下心に嘆きつつ、心の
中の恋に侘しく思いつつ門にでては
夕占を問いながら私を待って寝ているだろう妻に
早く逢いたいものだ。
大伴家持
巻17-3978
いや懐かしく 相見れば 常初花に
心ぐし めぐもなしに 愛しけやし
吾が奥妻の 大君の 命畏み
あしひきの 山越え野行き
天離る ひな治めにと
別れ来し その日の極み
あらたまの 年行き返り
春花の移ろふまでに 相見ねば
いたもすべなみ しきたへの
袖返しつつ 寝る夜落ちず
夢には見れど現にし
直にあらねば恋しけく
千重に積もりぬ 近くあらば
帰りだにも 打ち生きて 妹が手枕に
指し交へて 寝ても来ましも玉ほこの
路はし遠く 関さへに 隔りて
あれこそ よしゑやし 縁はあらむそ
霍公鳥 来鳴かむ月に いつしかも
早くなりなむ 卯の花の
にほへる山を 外のみも
振り放け見つつ 近江路に
い行き乗り立ち 青丹よし
奈良の吾家の ぬえ鳥の
うら嘆けしつつ 下恋ひに
思ひうらぶれ 門に立ち
夕占問ひしつつ 吾を待つと
寝すらむ妹を 逢ひて早みむ
★ いももわれも こころはおなじ
たぐへれど いやなつかしく
あひみれば とこはつはなに
こころぐし めぐしもなしに
はしけやし あがおくづま
おおきみの みことかしこみ
あしひきの やまこえぬいき
あまざかる ひなをさめにと
わかれこし そのひのきはみ
あらたまの としゆくかへり
はるはなの うつろふまでに
あひみれば いたもすべなし
しきたへの そでかへしつつ
ぬるよおちず いめにはみれど
うつつにし ただにあらねば
こひしけく ちへにつもりぬ
ちかうあらば かへりだにも
うちゆきて いもがたまくら
さしかへて ねてもこましを
たまほこの みちはしとほく
せきさへにへなりて ありこそ
よしゑやし よしはあらむそ
ほととぎす きなかむつきに
いつしかも あやくなりなむ
うのはなの にほへるやまを
よそのみも ふりさけみつつ
あふみじに いゆきのりたち
あをによし ならのわぎへに
ぬえどりの うらなけしつつ
したこひに おもひうらぶれ
かどにたち ゆうけしつつ
あをまつと なすらむいもを
あひてはやみむ
★ 妻も私も心は同じである。いっしょにいても
ますます心引かれ、心いぶせると恋に苦しむ
こともなく愛らしい、わが心の奥の妻よ。
大君の御命令を恐れ多く、あしひきの
山を越え野を行き天遠いひなを治めにと別れて来たその日に
最後に、あらたまの年も改まり、春の花が散ってゆくまでに
逢うこともないので、何とも方法となくしきたへの
袖を折り返しながら寝る夜は、いつも夢に見えても
直接に逢うこともできないので恋しさは幾重に積もった
。都が近ったらちょっと帰ってでも行って、妹の手枕に
さしかわして寝てて来ようものを、玉ほこの路は遠く
関所まで間をへだてていることだ。
ままよ、何かよい手段があるだろうか。
霍公鳥が来て鳴く月になるのはいつか
。早くなって欲しい。卯の花は美しく
咲く山を外に見ながら近江路を辿って
いって、青丹美しい奈良の我が家を到り
ぬえ鳥のように下心に嘆きつつ、心の
中の恋に侘しく思いつつ門にでては
夕占を問いながら私を待って寝ているだろう妻に
早く逢いたいものだ。
大伴家持
巻17-3978