★　ふせのうみ　おきつうみ　しらなみあり


　　　かよひいや　　　みつつしのはむ

★　布勢の海の沖の白波のようにいつも通いつづけ

　　、年ごとに一層見つつ賞美しよう

　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻17－3992

[0回]

★　物部の　八十伴の緒を　思ふどち

　心遣らむと　　馬並めて　うちくぶりの

　白波の　荒磯に寄する　渋たにの

　崎徘徊り　松田江の　長浜過ぎて

　宇奈比川　清き瀬のごとに　鵜川立ち

　か行きかく行きて　見つれども

　そこも飽かむと　布勢の海

　船浮け据えて　沖辺漕ぎ

　辺に漕ぎ見れば　渚には

　あぢ群騒き　　島廻には

　木未花咲き　諾多も

　見の清けきか　玉くしげ

　二上山に　述ふ蔦の

　行きは別れず　あり通ひ

　いや毎年は　思ふどち

　かくし遊ばむ　　今見るごと


★　ものふの　　やそともをの

　おもふどち　こころやらむと

　うまなめて　うちくびりの

　しらなみの　　ありそによする

　しぶたにに　　さきたもとほり

　まつだえの　　ながはますぎて

　うなひがは　　きよきせごとに

　うかはたち　　かゆきゆきて

　みつれども　　そこもあかむと

　ふせのうみに　　ふねうけすゑて

　おきへこぎ　　へにこぎみれば

　なぎさには　　しままには

　こぬれさき　　ここばくも

　みのさやけきか　たまくしげ

　ふたがみやまは　はふつたの

　いきはわかれず　　ありかよひ

　いやとしのはに　　おもふどち

　かくしあそばむ　　いまもみるごと

★　物部の多くの官人たちが親しい同士に

　　気持ちを晴らそうと馬を連ねて

　　うちくぶりの　白波が　荒磯に寄する

　　渋たにの崎を散策し、松田江の長い

　　浜べを通り　宇奈比川の　清らかな

　　瀬ごとに　鵜飼しつつ　あちこちと行って

　　見てもなおそれで飽きることなく布勢の海

　　船を浮かばせ　沖へ漕いだり海岸近くに

　　漕いだりして見ると　波打ち際には　　

　　味鴨の群が騒ぎ、島のまわりには　梢に花が咲いて

　　、何と清らかな　風景だろう　。玉くしげの二上山には

　　はい伸びる蔦草に行未も別れことなく　通い続け

　　、毎年いっそう仲間同士でこのようの遊ぼう

　今見ているように

　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　　　　巻17－3991

[0回]

★　わがせこが　　たまにもがもな　　てにまきて
　　
　　　みつつゆかむを　　　おきてゆかばをし


★　あなたが玉であって欲しい。わが手に巻いて見ながら

　　行こうものを、置いていくと惜しい

　　　　　　　　大伴家持

　　　　巻17－3990

[0回]

★　なごのうみ　おきつなみ　　しろなみしくしくに

　　　おもほえむかも　　　たちわかれなば


★奈呉の海の沖の白波がしきりに寄せるように、

しきりに慕われるだろうな。別れてしまったなら

　　　　　　　大伴家持

　　巻17－3989

[0回]

★　ぬばたまの　　つきにむかひて　　ほととぎす

　　　なくおとさやけし　　さととほみかも


★ぬばたまの月に向かってほととぎすの鳴く声が

　
　遠い。里遠く鳴くだろうからかな

　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻17－3988

[0回]