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暗くなってきたので、小西さんの奥様の実家に戻った。
もう夕飯が用意されていた・・・・行きがけに、立ち寄った市場で、奥様が買い物していた豚肉・・・
これは、掲示板に書かなかったが、飼って居る豚は、特別の時にしか、殺さない・・・・例えば、
小西さんが奥様とご結婚された時は、三頭の豚が殺され、三日三晩お祝いが続いたそうだ。
だから、奥様の実家の豚さんは私たちの食事のためには殺されてはいないのだ。
市場で買った豚肉に、奥様のお父様が、独自のハーブに漬け込み、それを、薪でじっくりと
奥様が焼いてくださる。山菜と小西さんが大好きと言う、スイートバジルに似た
ハーブの炒め物・・・・そして、タイ米と日本米の間のような粘り気の、小西さん曰く、
「ジャポニカ米」と、共に頂く・・・そうそう、大切な事を忘れていた。
そのジャポニカ米でつくられた地元のお酒を最初に頂いた。
わたしは、お酒は強くないけれど、焼酎のような日本酒のような不思議な味がとても飲みやすく
どんどん飲んでいた。
木村先生の右隣に座りなさい・・・と、言われ、光栄にも、お隣に座した。
どんどん、お酒が進む・・・・・先生は、私が飲めないのを知っていたせいか、わたしのお酒も
どんどん飲んでいる。わたしは、先生の気配りを嬉しく思った。
さんざん飲んでから、小西さんに「ところで、何度ぐらい?このお酒は?」と先生が聞くと
小西さんは、「そうですね・・・40度ぐらいでしょうか・・・」と、淡々と答えた。
うっひやぁ~・・・そんなこととは、露知らず、飲んでいた私・・・・
不思議だ・・・私は何故酔わない・・・なんでこんなに、心地よく・・・そして、豚肉も野菜炒めも
すっごく、美味しい・・・何度もおかわりした。
常々、主婦でもある私は、長女が、我が家に帰ったときに、私のお澄ましを飲んで、この味だけ
は、真似できないんだよね。何で味付けしているの?と、聞かれる。普通にしてるよ、と答える。
きっと、この美味しさは心の込められた気だと思った。
どんな高級な食材であっても、心と愛情がなければ、大変まずいものになってしまう・・・・
食べる相手が少しでも美味しく食べられるように・・・・それが、料理を美味しくする・・・・と、私は
思う。まぁ、たまにどうしようもなく下手な人もいるが、そういう人は、他の事がきっと、
上手なのだろう。
ともあれ、夜はとっぷりと更けて行き、木村さんに特別なスイッチが入ってしまった。
「千葉さん、ギター持ってきて」・・・しぶしぶ、ギターを持ってくる千葉さん・・・・さぁ、それからが、
大変だ。悲しい酒、惜別の歌・・・ぞくぞくと、木村節が、カレンの静かな夜の村に響き渡る・・・・
豚も時折、ぶーぶーと一緒に歌っている。虫たちも合唱している。ついでに、鶏までも・・・・
コウタさんの篠笛も入る・・・・先生がとうとう上半身裸になって踊りだした・・・
お願いだから、下まで着物が落ちませんように・・・・・
そうして、全てが、ごく自然に流れて行く・・・・無理も無く、ごく自然に・・・・
「さぁ、次は辻さん」
私も、浜地鶏ならぬ、浜千鳥を歌った。
隣家の人が聞いている。
こうして、私たちのカレン村の夜は更けていった・・・忘れられないカレン村の夜が・・・・
そして、私は、この後、暗闇のトイレ兼水かけ場で、真っ裸になり、虫の音の中、
えいやっと、修行僧ならぬ水浴びをした。
いつまにか、お布団しいてくださったていた。
しかも、女性である私は特別一部屋頂いて、蚊帳の中で、眠りについたのだった。
カレン村の夜よ・・・さようなら・・・お休みなさい・・・・