★　天皇の　遠の朝廷　韓国に　渡るわが背は

　家人の　斎ひ待たねか　正身とも　過しけむ

　秋さらば　帰りまさむと　たらちねの　

　母に申して　時も過ぎ　月も経ぬかも

　今日か来む　明日も来むと　家人は

　待ち恋ふらむに　遠ほ国　いまだ着かず

　大和をも　遠く離りて　岩が根の　荒き島根に

　宿りする君

★　すめろきの　とほのみかどと　からくにに　わたるわがせは

　　　いへひとの　いはひまたねか　ただみかも　あやまちしけむ

　　あきさらば　かえりまさむと　たらちねの

　　けふかこむ　　あすもこむと　いへひとは

　　まちこふらくに　とおほくに　いまだつかず

　　やまとをも　とおくさりて　いわがねの　あらきしまねに

　　やどりするきみ

★　天皇が支配する遠い朝廷として韓国に渡ろうろするあなたは

　　家の人が潔斎して待たないからか、あるいはあなた自身が

　　何か過ちをしたか、秋になったら帰りましょうと、時も立ち月と

　　過ぎていったので今日帰るだろうか、明日は帰ってくるのだろうか

　　と家人が待ち遠しく思っているのに遠い韓国に、まだ着きもせず

　　一方大和をも遠く離れて、この岩石も荒々島に旅宿りする

　　　そんなあなたよ

　　　　　　　巻１５－3688

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★あしひきの　やまとびこゆ　かりがねは

　　　みやこにゆかば　　いもにあひてこね


★　あしひきの山を飛び越え去る雁は

　　都に行ったら妻に逢ってくれ

　　　　巻15－3687

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★　たびながば　おもひたえても　ありつれど

　　いへにあるらし　いもにおもひがかなし

★　今は、旅とのこととて、すべてあきらめてもいるのだが

　　ただ家に残した妻のことだけが、心を悲しませたあきためらにことよ


　　　　巻15－３６８６

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★たらしひめ　ふねはてけむ　まつうらのうみ

　　　　うみいもがまつべき　　つきはへにつつ

★　足姫の御船が泊まったという松浦の海よ、

　　その名のように妻が帰りを待ち受けるはずの

　　月は過ぎさりつつ

　　　　　巻15－3685

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★　あきのよを　ながみにか　あらむなにこそ

　　　ここばいのねらえぬ　　ひとりねればか

★　秋の夜は長いかなあ。どうしてひどく寝苦しいのかあ

　　一人で寝るからか

　　　　　巻15－3684

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