★ 昔あった出来事でふしぎな事と
言い伝えてきた。血沼壮士とうない
壮士が名誉を争うとてたまきはる命も捨てて
争って求婚した少女の話は聞くと何と悲しいことよ
春花のように匂わしく栄えた。また、秋の葉のように
美しく輝いた惜しい花の盛りが大夫たちのことばが
心を悲しませるので 父母に乞いをし 家を離れて
海岸に出で立ち朝夕に満ちてくる潮の波に
靡く玉藻の節の間にほどに短く惜しい命を、露霜のように
失ってしまった。そこで墓所のようにここと決めて
後代に聞き告ぐ人も、一層しのぶよすがにせよとて
黄楊の小ふしのを このように刺したらしい。それが
生い育って風に靡いているよ
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