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★天地の 初の時ゆ うつそみの
八十伴の男は 大君に まつろふものと
定まれる 官にしあれば 大君の
命畏み ひな離る 国を治めむ
あしひきの 山川隔り 風雲に
言は通へど 直に逢はず 思ひ恋ひ
気衝き居るに 玉ほこの 道来る人の
伝言に われに語らく 愛しきよし
君はこの頃 心さびて 嘆かひ坐す
世の中の 憂けく辛けく 咲く花も
時に移ろふ うつせみの 常無くありけり
垂乳根の 御母の命 何しかも
時しはあらねど 真鏡 見れども飽かず
珠の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の
失せゆく如く 置く露の 消ぬるが如く
玉藻なす 靡き臥伏し 逝く水の
留みかねつと 狂言や 人の云いつる
逆言の 人の告げつる 梓弓
爪ひく夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ
にはたづみ 流るる涙 留まみ」かねつも
★ あめつちの はじけのときゆ うつそみの
やそとものをは おほきに まつろふものと
さだめれる つかさにしあれば やまかわへなり
かぜくもに ことはかよへど ただにはあはず
ひのかさなれば おもひこひ いきづきをるに
たまほこの みちくひとに われにかたらく
はしきよし きみはこのごろ うらさびて
なげかひいます よのなかの うけくつらけく
さくはなも ときにうつろひ うつせみの
つねなくありけり たらちねの みおやのみこと
なにしかも としきはあらず まそかがみ
みれどもあかず たまのをの をしきさかかりに
たつきりの うせゆくごとく おくつゆの
けぬるがごとく たまもなす なびきこひし
ゆくみずの とどみかねつと まがごとや
ひとのいひつる およづれの ひとのつげつる
あづさゆみ つまひくよとの とほとにも
きけばかなしみ にはたづみ ながるるなみだ
とどみかねつも
★ 天地が開けた最初から、現し身の多くの官人たちが
天皇に従う者としれ定まった役目にあるのだから、
天応の命令を尊んでひな離る国を治めるとて、あしひきの
山川を隔てていて風雲の中に、たよりだけが通うけれども、
じかに逢うことも無く、日々が重なったので、物を思って
溜息をついたところ、玉ほこの道をやって来た人の伝言で
私に語っていうことには、「愛すべき君は心寂しく嘆いて
おいでです。世の中の悲しく辛いことには、咲く花の
時を経て移ろってゆく。現実は無常なものです。
たらちねの母君は何としたことか。時はいくらもあろうものを
真鏡のように見飽きない、玉の緒のように、惜しい命の盛りに
立ち上る霧が失せてゆく如く、置く露の消えて行く如く
玉藻のように病床に長く横たわり逝く水のように留めることも
知りませんでした。と。今日狂言を、人は告げたのか。
梓弓は妻引きする夜音のように、遠い便りとして聞いたので
悲しみのあまり庭を流れる水のように、落ちる涙はとめどないことす
大伴家持
巻19-4224
八十伴の男は 大君に まつろふものと
定まれる 官にしあれば 大君の
命畏み ひな離る 国を治めむ
あしひきの 山川隔り 風雲に
言は通へど 直に逢はず 思ひ恋ひ
気衝き居るに 玉ほこの 道来る人の
伝言に われに語らく 愛しきよし
君はこの頃 心さびて 嘆かひ坐す
世の中の 憂けく辛けく 咲く花も
時に移ろふ うつせみの 常無くありけり
垂乳根の 御母の命 何しかも
時しはあらねど 真鏡 見れども飽かず
珠の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の
失せゆく如く 置く露の 消ぬるが如く
玉藻なす 靡き臥伏し 逝く水の
留みかねつと 狂言や 人の云いつる
逆言の 人の告げつる 梓弓
爪ひく夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ
にはたづみ 流るる涙 留まみ」かねつも
★ あめつちの はじけのときゆ うつそみの
やそとものをは おほきに まつろふものと
さだめれる つかさにしあれば やまかわへなり
かぜくもに ことはかよへど ただにはあはず
ひのかさなれば おもひこひ いきづきをるに
たまほこの みちくひとに われにかたらく
はしきよし きみはこのごろ うらさびて
なげかひいます よのなかの うけくつらけく
さくはなも ときにうつろひ うつせみの
つねなくありけり たらちねの みおやのみこと
なにしかも としきはあらず まそかがみ
みれどもあかず たまのをの をしきさかかりに
たつきりの うせゆくごとく おくつゆの
けぬるがごとく たまもなす なびきこひし
ゆくみずの とどみかねつと まがごとや
ひとのいひつる およづれの ひとのつげつる
あづさゆみ つまひくよとの とほとにも
きけばかなしみ にはたづみ ながるるなみだ
とどみかねつも
★ 天地が開けた最初から、現し身の多くの官人たちが
天皇に従う者としれ定まった役目にあるのだから、
天応の命令を尊んでひな離る国を治めるとて、あしひきの
山川を隔てていて風雲の中に、たよりだけが通うけれども、
じかに逢うことも無く、日々が重なったので、物を思って
溜息をついたところ、玉ほこの道をやって来た人の伝言で
私に語っていうことには、「愛すべき君は心寂しく嘆いて
おいでです。世の中の悲しく辛いことには、咲く花の
時を経て移ろってゆく。現実は無常なものです。
たらちねの母君は何としたことか。時はいくらもあろうものを
真鏡のように見飽きない、玉の緒のように、惜しい命の盛りに
立ち上る霧が失せてゆく如く、置く露の消えて行く如く
玉藻のように病床に長く横たわり逝く水のように留めることも
知りませんでした。と。今日狂言を、人は告げたのか。
梓弓は妻引きする夜音のように、遠い便りとして聞いたので
悲しみのあまり庭を流れる水のように、落ちる涙はとめどないことす
大伴家持
巻19-4224