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★ かけまくも あやに賢し 皇神祖の
神の大御代に 田道間守 常世に渡り
八ほこ持ち 参出で越し時に 時じくの
香の木の実を 恐しくも 遣したまま
国も狭に 生ひ立ち栄え 春されば
孫枝萌えつつ ほととぎす 鳴く五月には
初花を 枝に手折りて つとにも遣りみ
白たへの 袖にもこ入れ かぐはしみ
置きて枯らしみ あゆる実は 玉に貫きつつ
手に巻きて 見れども飽かず 秋づけば
時雨の雨降りに あしひきの 山の木末は
紅に匂へれど 橘の 成れるその実は
直照りに いや見が欲しく み雪降る
冬に倒れば 下置けども その葉も枯れず
常盤なす いや栄映えに 然れこそ
神の御世に 宜しいなへに この橘を
時じくの かの木の実と名づけららしも
★かけまくも あやにかしこし すめろきの
かみのおおみよに たぢまもり
とこよにわたり やほこもち まゐでこし
ときじくの かのこのみを
かしこくも のこしたまへれ
くにもせに おひたちさかえ
はるされば ひこえもえつつ
ほととぎす なくさつきには
はつはなを えだにたおりて
をとめらに つとにもやりみ
しろたへの そでにこきいれ
かふはしみ おきてからしみ
あゆみは たまにぬきつつ
てにまきて みれどもあかず
あきづけば しぐれのあめふり
あしひきの やまのこぬれには
くれないに にほひちれども
たちばなの なれるそのみは
ひたていりに いや見が欲しく
みゆきふる ふゆにいたれば
しもおけども そのはのかれず
ときはなす いやさかはえに
しかれこそ かみのみよに
よろしなへ このたちばなを
ときじくの かくのこのみと
なづけけらしも
★口にするものおそれ多い、遠い天皇を
御代に田道間守が常世の国に渡って
、八ほこのを持ち帰って来た時に
時じくの香の果実としてこの橘をわが国に
伝え残されたので、今は国中に成育し
春になると、若枝を伸ばす。ほととぎすが
鳴く五月には咲き始めた花を枝ごと手折り
少女たちに贈り物としたり、白妙の袖にも
しごき入れたし、香りのよさに そのまま花を
枯らせて落ちた実は玉として紐に通しては
手に巻きつけて、いつまでも見飽きない。
秋になると時雨が降ってあしひきの山の木々は
梢を紅いれに 染めて散ってしまうのだけれども
橘が結んだ実はつやつやと輝いて、ますます目を
引くことだ。やがて雪の冬になると 霜がおりるのに
橘の葉だけ枯れない。いつまでも一層栄え輝き
、そのゆえにこそ、 神代の昔から なるほど
この橘を時じくの香の木の実と名づけたらしいよ
大伴家持
巻19-4111
神の大御代に 田道間守 常世に渡り
八ほこ持ち 参出で越し時に 時じくの
香の木の実を 恐しくも 遣したまま
国も狭に 生ひ立ち栄え 春されば
孫枝萌えつつ ほととぎす 鳴く五月には
初花を 枝に手折りて つとにも遣りみ
白たへの 袖にもこ入れ かぐはしみ
置きて枯らしみ あゆる実は 玉に貫きつつ
手に巻きて 見れども飽かず 秋づけば
時雨の雨降りに あしひきの 山の木末は
紅に匂へれど 橘の 成れるその実は
直照りに いや見が欲しく み雪降る
冬に倒れば 下置けども その葉も枯れず
常盤なす いや栄映えに 然れこそ
神の御世に 宜しいなへに この橘を
時じくの かの木の実と名づけららしも
★かけまくも あやにかしこし すめろきの
かみのおおみよに たぢまもり
とこよにわたり やほこもち まゐでこし
ときじくの かのこのみを
かしこくも のこしたまへれ
くにもせに おひたちさかえ
はるされば ひこえもえつつ
ほととぎす なくさつきには
はつはなを えだにたおりて
をとめらに つとにもやりみ
しろたへの そでにこきいれ
かふはしみ おきてからしみ
あゆみは たまにぬきつつ
てにまきて みれどもあかず
あきづけば しぐれのあめふり
あしひきの やまのこぬれには
くれないに にほひちれども
たちばなの なれるそのみは
ひたていりに いや見が欲しく
みゆきふる ふゆにいたれば
しもおけども そのはのかれず
ときはなす いやさかはえに
しかれこそ かみのみよに
よろしなへ このたちばなを
ときじくの かくのこのみと
なづけけらしも
★口にするものおそれ多い、遠い天皇を
御代に田道間守が常世の国に渡って
、八ほこのを持ち帰って来た時に
時じくの香の果実としてこの橘をわが国に
伝え残されたので、今は国中に成育し
春になると、若枝を伸ばす。ほととぎすが
鳴く五月には咲き始めた花を枝ごと手折り
少女たちに贈り物としたり、白妙の袖にも
しごき入れたし、香りのよさに そのまま花を
枯らせて落ちた実は玉として紐に通しては
手に巻きつけて、いつまでも見飽きない。
秋になると時雨が降ってあしひきの山の木々は
梢を紅いれに 染めて散ってしまうのだけれども
橘が結んだ実はつやつやと輝いて、ますます目を
引くことだ。やがて雪の冬になると 霜がおりるのに
橘の葉だけ枯れない。いつまでも一層栄え輝き
、そのゆえにこそ、 神代の昔から なるほど
この橘を時じくの香の木の実と名づけたらしいよ
大伴家持
巻19-4111