★うなはらを　　とおくわたりて　　としへふとも

　　じらがむすべる　　ひもとくなゆめ

★海原を遠く渡って行って年月を過ごそうと

　も、愛が結んだ紐は、解くなけして

　　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻20－4334

[0回]

★　とりがなく　　あずまおとこの　　つまわかれ

　　　　　かなしくありけむ　　としのをながみ

★鶏が鳴く東国の男の妻との別離は悲しかったろう

　　　　　　　　　　　　・鶏が鳴く→枕詞

　　　　　　　　　　大伴家持
　
　　　巻20－4333

[0回]

★ますたをの　　ゆきとりおいて　　いでていけば

　　　　わかれをおしみ　　　なげきつま


★大夫がへいを積んでいったので、

　　別れを惜しんで嘆いたろう。妻よ

　　　　　　　　　　　大伴家持

　　巻20－4332

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★　天皇の　遠の朝廷

　　しらぬひ　筑紫の国は

　　敵守る　　鎮の白そと

　　聞し食す　四方の国には

　　人多に　　満ちてあれど

　　鶏が鳴く　東男は

　　出で向かひ　顧みせずて

　　猛き軍卒と　　労ぎ給ひ
　
　　任のまにまに　　たらちねの

　　母が目離れて　　若草の
　
　　妻をも枕ず　　あらたまの

　　月日数みつつ　　蘆が散る

　　難波の御津に　　大船に

　　真櫂繁貫く　　朝凪に

　　水手整へ　　夕潮に

　　楫引きをり　　率ひて

　　漕ぎ行く君は　波の間を

　　い行きさぐくみ　真幸くも

　　早く　　到りて

　　大君の　　命まにまに

　　大夫に　心を持ちて
　　
　　あり廻り　事し終わらば

　　障まはず　　帰り来ませと

　　斎翁を　　床辺にすゑて

　　白妙の　　袖折り返し

　　ぬばたまの　黒髪敷き

　　長き日を　　待ちかも恋ひむ

　　愛しき妻らは

★　おほきみの　　とほのみかどと

　　しらぬひ　　　　つくしのくには

　　よもぼくにには　　ひとさはに

　　みててはあれど　　とりがなく

　　あずまをのこは　　かへりみずして

　　いさみたる　　たけきいくさと

　　ねぎたまひ　　　たけのまにまに

　　たらちねのははが　　めかれて

　　わかくさの　　　　つまをもまかず

　　あらたまの　　　つきひよみつつ

　　あしがちる　　　なにわのみつに

　　おおふねに　　　まかいしじぬき　

　　あさなぎに　　　かこととのへ

　　かじひきをり　　あどもひて

　　こぎゆくきみは　　なみのまに

　　いゆきさぐくみ　　まさきくも

　　はやくいたりて　　おほきみの

　　みことまにま　　ますらをの

　　こころをもちて　　ありめぐり

　　ことをしおわらば　　つつまはず

　　かへりきませと　　いはひべを

　　とこへにすえて　　しろたへの

　　そでおりかえし　　ぬばたまの

　　くろかみしきて　　ながきひを

　　まちかもこひむ　　はしきつまらが

★天皇の遠い朝廷として、知らぬひ

　筑紫の国を　天皇は外敵を防ぐ鎮護の

　とりでとなさり　お治めになる天下四方の

　国に、人民はいっぱいに満ちているのに

　鶏が鳴く東国の男を、敵に立ち向かって

　ひるまない勇敢な兵士だとして、労を

　いたわりなさる。その任命のまに、たらちねの

　母の目を離れ、若草の妻の手も枕とせず

　あらたまの月日を過ごしつつ、蘆が散る難波の

　港で、大船に両舷の櫂を一面に敷き、朝凪の
　　
　海に海に水手をよび揃え、夕潮にの中に

　楫を引きたわめて　軍団を率いて

　漕ぎ出して行くあなた。

　あなたは波間を押し分けて行き、無事に

　早々と筑紫に着き、天皇の命令のままに

　大夫の心を持って各地を廻りつづけ

　任務が終われば支障なく帰ってきてください

　そう願いつつ斎翁を床のほとりに据え、

　白妙の衣のそでを　折り返し

　ぬばたまの　黒髪を敷いて長い日々を

　待ち焦がれているだろう、いとしい妻は

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★　なにわづに　　よそひよそひて　　けふのひや

　　　　　いでてまからむ　　みるははなしに


★難波の港に、装いをこらして、今日の日にこそ出発

　してゆくだろうか。見送る母もなく

　　　　　　　　　　　　　　　大伴家持

　　　巻20－4330

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