★　いづれのおほん時にか、女御更衣あまたに侍ひ給ひけるなかに、

　いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり。

　はじめよりわれはと思ひあがり給へる御かたゞ、

めざましきものにおとしめそねみ給ふ。

同じほど、それより下﨟の更衣たちは、まして安からず、

あさふゆの宮仕へにつけても人の心をのみ動かし、

恨みを負ふつもりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心ぼそげに

里がちなるを　いよゝあかずあはれなるものに思ほして、

人のそしりをもえはゞからせ給はず、

世のためしにもなりぬべき御おもてなしなり。



★　いづれのおほんときにか、　にょうごかういあまたさぶらひけるなかに

　　いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれてときめきたまふ、ありけり。

　　　はじめよりわれはとおもひあがりたまへるおんかたがた、めざましきものに

　　おとしめそねみたまふ。おなじほど、それよりげらふのかういたちは、

　　ましてやすからず、あさゆふのみやづかへにつけても、

　　ひとのこころをのみうごかし、うらみをおふつもりにやありけむ、

　　いとあつしくなりゆき、ものこころぼそげにさとがちなるを、

　　いよいよあかずあはれなるものにおもほして、

　　ひとのそしりをもえはばからせたまはず、

　　よのためしにもなりぬべきおんおもてなしなり

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