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★ 大君の 行幸のまにま もののふの 八十伴の男と 出で行きし 愛し夫は 天飛ぶや
軽の道より 玉たすき 畝傍を見つつ あさもよし 紀伊道に入り立ち 真土山 越ゆらむ君は
黄葉の 散り飛ぶ見つつ 和びにし 我は思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ
君はあらむと あそそには かつは知れども しかすがに 黙もえあらねば 我が背子の
行きのまにまに 追はむとは 千遍思へど 手弱女の 我が身にしあれば 道守の
問はむ答へを 言ひ遣らむ すべを知らにと 立ちてつまづく
★ おおきみの みゆきのまにま もののふの やそとものをと いでゆきし うつくしつまは
あまとぶや かるのみちより たまたすき うねびをみつつ あさもよし きぢにいりたち
まつちやま こゆらむきみは もみちばの ちりとぶみつつ にきびにし われはおもはず
くさまくら たびをよろしと おもひつつ きみはあらむと あそそには かつはしれども
しかすがに もだもえあらねば わがせこの ゆきのまにまに おはむとは ちたびおもへど
たわやめの あがみにしあれば みちもりの とはむこたへを いひやらむ
すべをしらにと たちてつまづく
★ 大君の行幸に付き従い、たくさんの延臣たちと出かけていった愛しい夫は、天空を飛ぶ
軽の道から、美しい襷をかけたような畝傍山を見つつ、あさもよし紀の国への道へ入り
立ち、真土山を越えようとしているあなたは、黄葉が散り飛ぶのを見つつ、慣れ親しんだ
私のことは思わないで、草枕の旅を楽しく思いつつあなたはいるのであろうと、一方では
知ってはいても、そうはいっても、黙ってはいられないので、我が夫の出かけていった
とおりに、追いかけようと何度も思いはしますが、か弱い女の身である、わが身なので
関所の番人が問いただす答えをどう言ってよいものかその手立てもわからず、立ち上が
ってはみるものの、つまづいてしまう事です。
巻4-543 笠朝臣金村