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万葉歌手、辻友子のブログへようこそ! http://tomoko.ciao.jp
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★古に ありける技の

 奇ばしく  事と言ひ継ぐ

 血沼壮士  うなひ壮士の

 うつせみの 名を争うと

 たまきはる  命も捨てて

 争ひに  妻問しける

 少女らが 聞けば悲しさ

 春花の   にほえ栄えて

 秋の葉の   にほひに照れる

 あたらしき  身の壮すら

 大夫の    言いたはしみ

 父母に   申し照れて

 家離り   海辺に出で立ち

 朝夕に  満ち来る潮の

 八重波に  靡く玉藻の

 節の間も  惜しき命を

 露霜の   過ぎましにけれ

 奥墓の   此処と定めて

 後の代の  聞き継ぐ人も

 いや遠に  思ひにせよと

 黄楊小櫛  しかし刺しけらし

 生ひて靡けり

★ いにしへに  ありけるいわの

  くさばしく  ことといひける

  ちぬまおおとこ  うなひおとこの

  うつせみの   なをあらそうふと

  たまきはる    いのちもすてて

  あらそひに    つまどひしける

  をとめらが    きけばかなしさ

  にほひさかえて   あきのはの

  にほひてれて    にほひにてれる

  あたらしき     みのさかりすら

  ますらおの      こといたはしみ

  ちちははの     まをしわかれて

  いへざかり     うみへにいでたち

  あさよひに     みちくるしおの

  やへなみに     なびくたまもの

  ふしのまも    おしきいのちを

  つゆしもの    すぎましにけれ

  おくつきの    こことさだめて

  ききつぎひとも  いやとおひ

  しのひにせよと  つげをぐし

  しかさしけらし  おひてなびけり

★ 昔あった事で不思議な事と栄えてきた。

  血沼壮士とうない壮士が世間の名誉を

  争うとて、たまきはる命も捨てて、争って

  求婚した少女の話は聞くと何と悲しいことよ。

  春花のように匂わしく栄えた、秋の葉のように

  美しく輝いた惜しい身の盛りにすら、大夫たちの

  ことばが心を悲しませるので、父母に暇乞いをし

  家を離れて海岸に出で立ち、朝夕に満ちてくる潮の

  八重波に靡く玉藻の節の間ほどに、短く惜しい命を

  露霜のように失ってしまった。そこで墓所をここと決めて

  後代に聞きつぐ人も  一層遠くしのぶよすがにせよとて

  黄楊の小櫛をこのように刺したらしい。それが、生い育って

  風に靡いているよ

       大伴家持
 
                   巻19-4211

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