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★此間にして 背向に見ゆる
わが背子が 垣内の谷に
明けされば 榛のさ枝に
夕されば 籐の繁みに
遥遥に 鳴くほととぎす
わが屋戸の 植木橘
花に散る 時を未だしみ
来鳴かなく そこは怨みず
しかれども 谷片付きて
家居せる 君が聞きつつ
告げなくみも憂し
★ ここにして そがひみみゆる
わがせこが かきつのたにに
あけされば はりのさえだに
ゆうされば ふじのしげみに
はろはろに なくほととぎす
わがやどの うえきたちばな
はなにしる ときをまだしみ
きなかなく そこはうらみず
しかれども たにかたづきて
いえいせる きみがききつつ
つげなくもうし
★ ここから背後に見えるあなたの家の囲いの
谷で、朝になるとはりのえだに、夕べになると
籐の花の繁みに遠く鳴くほととぎすは
わが家に植えた橘の花が散る時にも、まだ時が早い
とて、来ては鳴かない。そのことは怨めしく思って
ないが、谷の近くに住んでおられるあなたが、声を
耳にしながらそれを告げて来られないことも、つらいことだ
大伴家持
巻19-4207
わが背子が 垣内の谷に
明けされば 榛のさ枝に
夕されば 籐の繁みに
遥遥に 鳴くほととぎす
わが屋戸の 植木橘
花に散る 時を未だしみ
来鳴かなく そこは怨みず
しかれども 谷片付きて
家居せる 君が聞きつつ
告げなくみも憂し
★ ここにして そがひみみゆる
わがせこが かきつのたにに
あけされば はりのさえだに
ゆうされば ふじのしげみに
はろはろに なくほととぎす
わがやどの うえきたちばな
はなにしる ときをまだしみ
きなかなく そこはうらみず
しかれども たにかたづきて
いえいせる きみがききつつ
つげなくもうし
★ ここから背後に見えるあなたの家の囲いの
谷で、朝になるとはりのえだに、夕べになると
籐の花の繁みに遠く鳴くほととぎすは
わが家に植えた橘の花が散る時にも、まだ時が早い
とて、来ては鳴かない。そのことは怨めしく思って
ないが、谷の近くに住んでおられるあなたが、声を
耳にしながらそれを告げて来られないことも、つらいことだ
大伴家持
巻19-4207