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★ 大君の 命畏み
妻別れ 悲しくはあれど
大夫の 心を振りおこし
とり装ひ 門出をすれば
たらちねの 母かき撫で
若草の 妻は取り付き
平けく われは斎はぬ
好去くて 早還り来と
真袖持ち 涙を拭い
涙をのごひ むせびつつ
言問ひすれば 群鳥の
出でたちかてに 滞り
還り見しつつ いや遠に
国を来離れ いや高に
山を越え過ぎ 葦が散る
難波に聞いて 夕潮に
船を浮けすえ 朝凪に
舳むけ漕がむと さもらふと
わが居る時に 春霞
島廻に立ちて 鶴が音の
悲しき聞けば 遥々に
家を思いだし 負征矢の
そよと鳴るまで 鳴きつるかも
★おおきみの みことかしこみ
つまわかれ かなしくはあれど
ますらおの こころふりおこし
とりよそおひ かどでをすれば
たらちべぼ ははかきなで
わかくさの つまはとりつき
たひらけく われはいははむ
まさきくて はやかへりこと
まそでをもち なみだをのごぎ
むせひつつ ことどひすれば
むらどりの いでかちかてに
とどこほり かへりみしつつ
いやとほび くにをきはなれ
いやたかに やまをこえすぎ
あしがちる なにはにきいて
ゆうしおに ふねうけすえ
あさなぎに へむけこがむと
さもらふと わがをるときに
はるがすみ しまみにたちて
たづがねの かなしくきけば
はろばろに いえをおもひで
おひそやの そよとなるまで
なきつるかも
★大君の命令を畏み、妻との別れは悲しくは
あるが、大夫のこころを振り起こし、武装を
固めて旅立ちすると、たらちねの母は頭を撫で
「御無事にと私はお祈りしていましょう。つつがなく
早く帰ってきてください」と、両袖で涙を拭い
むせび泣きつつ 語りかけるので
群鳥のように出で立つこともできあう、足もしぶりがちに
後ろを振り返りつづける。 そうしながら、ますます
故郷を離れて来、いっそう高く山を越えて来て、今
蘆の花が散る難波に来ている。夕潮の中に船を浮かべ据え
朝凪に舳さきを向けて漕ぎ出そうと様子を見ていると
春霞が島の廻りに立ち込め、鶴が悲しい鳴き声を
ひびかせるので はるかに家郷を思ひだし、
背に負うた矢が 音を立てるほどに 嘆いたことだ
大伴家持
巻20-4398
妻別れ 悲しくはあれど
大夫の 心を振りおこし
とり装ひ 門出をすれば
たらちねの 母かき撫で
若草の 妻は取り付き
平けく われは斎はぬ
好去くて 早還り来と
真袖持ち 涙を拭い
涙をのごひ むせびつつ
言問ひすれば 群鳥の
出でたちかてに 滞り
還り見しつつ いや遠に
国を来離れ いや高に
山を越え過ぎ 葦が散る
難波に聞いて 夕潮に
船を浮けすえ 朝凪に
舳むけ漕がむと さもらふと
わが居る時に 春霞
島廻に立ちて 鶴が音の
悲しき聞けば 遥々に
家を思いだし 負征矢の
そよと鳴るまで 鳴きつるかも
★おおきみの みことかしこみ
つまわかれ かなしくはあれど
ますらおの こころふりおこし
とりよそおひ かどでをすれば
たらちべぼ ははかきなで
わかくさの つまはとりつき
たひらけく われはいははむ
まさきくて はやかへりこと
まそでをもち なみだをのごぎ
むせひつつ ことどひすれば
むらどりの いでかちかてに
とどこほり かへりみしつつ
いやとほび くにをきはなれ
いやたかに やまをこえすぎ
あしがちる なにはにきいて
ゆうしおに ふねうけすえ
あさなぎに へむけこがむと
さもらふと わがをるときに
はるがすみ しまみにたちて
たづがねの かなしくきけば
はろばろに いえをおもひで
おひそやの そよとなるまで
なきつるかも
★大君の命令を畏み、妻との別れは悲しくは
あるが、大夫のこころを振り起こし、武装を
固めて旅立ちすると、たらちねの母は頭を撫で
「御無事にと私はお祈りしていましょう。つつがなく
早く帰ってきてください」と、両袖で涙を拭い
むせび泣きつつ 語りかけるので
群鳥のように出で立つこともできあう、足もしぶりがちに
後ろを振り返りつづける。 そうしながら、ますます
故郷を離れて来、いっそう高く山を越えて来て、今
蘆の花が散る難波に来ている。夕潮の中に船を浮かべ据え
朝凪に舳さきを向けて漕ぎ出そうと様子を見ていると
春霞が島の廻りに立ち込め、鶴が悲しい鳴き声を
ひびかせるので はるかに家郷を思ひだし、
背に負うた矢が 音を立てるほどに 嘆いたことだ
大伴家持
巻20-4398