×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
PR
★ 大君の 畏かしこみ
妻別れ 悲しくはあれど
大夫の 情ふりおこし
とり装い 門出をすれば
たらちねの 母か撫で
若草の 妻は取り付き
平けく 我はいのらむ
好去くて 早還り来りと
真袖持ち 涙をのごひ
むせひつつ 言問ひすれば
群島の出で たちかへに
滞り 帰り見しつつ
いや遠に 国を来離れ
いや鷹に 山を越えすぎ
蘆が来て 難波に来居て
夕潮に船を 浮け据え
朝凪に へ向け漕がむと
さもらふと わが居る時に
春霞 島廻に立ちて
鶴が音の 悲しく鳴けば
遥々に 家を思ひ出
負征矢の そよと鳴るまで
鳴きつるかも
★ おおきみの みことかしこみ
つまわかれ かなしくはあれど
ますらをの こころふりおこし
とりよそおひ かどでをすれば
たらちねの ははかきなで
わかくさの つまはとりつき
たひらけく われははむ
まさきくて はやかへりこと
まそでもち なみだをのごひ
むせひつつ ことひすれば
むれどりの いでたちかてに
とどこほり かへりみつつ
いやとほに くにをきはなれ
いやたかに やまをこえすぎ
あしがちる なにわにきいて
ふゆしおに ふねをうけすえ
あさなぎに へむけこがむと
さもらふと わがをるときに
はるがすみ しまみにたちて
たづがねの かなしくなけば
はろばろに いへをおもひで
おひそやの そよとなるまで
なげきつるかも
★大君の御言畏み、妻との別れは
悲しくはあるが、大夫の心を
起こし、武装を固めて、旅立ちすると
たらちねの母は、頭を撫で、若草の
妻はとりすがり、「御無事にと私は
していましょう。つつがなく早く帰って
来てください。」と両袖で涙を拭い
むせびなきつつ語りかけるので、群鳥
のように、出でたつこともできず、
足もしぶりがちに後ろを振り返り続ける
そうしながら、ますます遠く故郷を離れて来、
いっそう高く山を越えて来て、今蘆の花が
散る難波に来ている。有潮中に船を置き
据え、朝凪に舳先を向けて漕ぎ出そうと
様子を見ていると、春霞が島のまわりにたちこめ
鶴が悲しい鳴き声をひびかせるので
遥かに 家郷を思い出し、背に負うた矢が
音を立てるほどに、鳴いたことです。
大伴家持
巻20-4398
妻別れ 悲しくはあれど
大夫の 情ふりおこし
とり装い 門出をすれば
たらちねの 母か撫で
若草の 妻は取り付き
平けく 我はいのらむ
好去くて 早還り来りと
真袖持ち 涙をのごひ
むせひつつ 言問ひすれば
群島の出で たちかへに
滞り 帰り見しつつ
いや遠に 国を来離れ
いや鷹に 山を越えすぎ
蘆が来て 難波に来居て
夕潮に船を 浮け据え
朝凪に へ向け漕がむと
さもらふと わが居る時に
春霞 島廻に立ちて
鶴が音の 悲しく鳴けば
遥々に 家を思ひ出
負征矢の そよと鳴るまで
鳴きつるかも
★ おおきみの みことかしこみ
つまわかれ かなしくはあれど
ますらをの こころふりおこし
とりよそおひ かどでをすれば
たらちねの ははかきなで
わかくさの つまはとりつき
たひらけく われははむ
まさきくて はやかへりこと
まそでもち なみだをのごひ
むせひつつ ことひすれば
むれどりの いでたちかてに
とどこほり かへりみつつ
いやとほに くにをきはなれ
いやたかに やまをこえすぎ
あしがちる なにわにきいて
ふゆしおに ふねをうけすえ
あさなぎに へむけこがむと
さもらふと わがをるときに
はるがすみ しまみにたちて
たづがねの かなしくなけば
はろばろに いへをおもひで
おひそやの そよとなるまで
なげきつるかも
★大君の御言畏み、妻との別れは
悲しくはあるが、大夫の心を
起こし、武装を固めて、旅立ちすると
たらちねの母は、頭を撫で、若草の
妻はとりすがり、「御無事にと私は
していましょう。つつがなく早く帰って
来てください。」と両袖で涙を拭い
むせびなきつつ語りかけるので、群鳥
のように、出でたつこともできず、
足もしぶりがちに後ろを振り返り続ける
そうしながら、ますます遠く故郷を離れて来、
いっそう高く山を越えて来て、今蘆の花が
散る難波に来ている。有潮中に船を置き
据え、朝凪に舳先を向けて漕ぎ出そうと
様子を見ていると、春霞が島のまわりにたちこめ
鶴が悲しい鳴き声をひびかせるので
遥かに 家郷を思い出し、背に負うた矢が
音を立てるほどに、鳴いたことです。
大伴家持
巻20-4398