★さ丹つらふ　君が御言と　玉梓の

　使ひも来ねば　思ひ病む　あが身一つこそ

　ちはやぶる　神にもな負う　卜部座る

　亀もの焼きそ　恋ひしくに　痛きあがそ

　いちしろく　身に染み透り　村肝の

　心砕けて　死なむ命　急になりぬ

　今更に　君か吾かよぶ　たらちねの

　母の命か　百足らず　八十のちまたに

　夕卜にも　卜にもそ問ふ　死ぬべきわがゆゑ


★さにつらふ　きみがみことと　たまあずさの

　つかひもこねば　おもひやむ　あがみひとつこそ

　ちはやぶる　かみにもなをう　とぶすわる

　かめものやきそ　こひしくに　　いたきああがそ

　いちしろく　みにしみわたり　むらきもの

　こころくだけて　しなむいのち　きゅうになりぬ

　いまさらに　　きみかあかよぶ　たらちねの

　ははのみことか　ももたらず　　やそのちまたに

　ゆうとにも　　とにもそとふ　　しぬべきわがゑ

★美しいあなたのおことばだと告げる玉梓の使いも

　来ないので、物思いに苦しむこの身ただ一つよ

　私の病気を、ちはやぶる神のせいにするな

　占い師をすえたり、亀甲を占ったりするな

　恋しさのあまり　辛いわが身だから。

　恋しさははっきりと体中に染み渡り

　村肝の 心砕けて　死なむ命　急ににわかになりぬ

　今更に　君か吾をよぶ　たらちねの　母の命が

　百足らず　八十のちまたに　夕卜にも

　卜にもそ問ふ　死ぬべきわがゆゑ

　　　　　巻17－3811

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