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★桃の花 紅色に
にほひたる 面輪のうちに
青柳の 細き眉根を
咲みまがり 朝影見つつ
少女らが 手に取り持てる
真鏡 二上山に
木の暗を 繁き谷へを
呼び響め 朝飛び渡り
夕月夜 かそけき野辺に
遥遥に 鳴くほととぎすよ
立ち潜くと 羽触に散らす
藤波の 花懐かしみ
引きよぢて 袖にこきれつ
染まば染むとも
★ もものはな くれないいろに
にほひたる おもわのうちに
ほそくまよねを えみまがり
あさかげみつつ をとめらが
てにとりもてる まそかがみ
ふたがみやまに このくれの
しげきたにへの よびとよめ
あさとびわたり ゆふづくよ
かそけきのへに はろはろに
なくほととぎす たちくくと
はぶりにちらす ふじなみの
はななつかしみ ひきよぢて
そでにこきれつ しまばしむとも
★桃の花が紅色に輝いているような顔に
立ちの中に青柳のような細い眉根を
笑い崩して 朝の姿を 映しつつ
少女が手に取る真鏡の二上山に
木の下を暗くして木木が繁る谷間を
鳴き響かせて朝を飛びうつり、
夕月のかすかな野辺に 遥かに鳴く
ほととぎすよ。それがくぐり飛ぶとて、
羽を振って散らす藤波のこころひかれて
引きよせて 袖にこきいれたことだ。
籐の花の色に、袖が染みるのなら染みるのが
よいと
大伴家持
巻19-4192
にほひたる 面輪のうちに
青柳の 細き眉根を
咲みまがり 朝影見つつ
少女らが 手に取り持てる
真鏡 二上山に
木の暗を 繁き谷へを
呼び響め 朝飛び渡り
夕月夜 かそけき野辺に
遥遥に 鳴くほととぎすよ
立ち潜くと 羽触に散らす
藤波の 花懐かしみ
引きよぢて 袖にこきれつ
染まば染むとも
★ もものはな くれないいろに
にほひたる おもわのうちに
ほそくまよねを えみまがり
あさかげみつつ をとめらが
てにとりもてる まそかがみ
ふたがみやまに このくれの
しげきたにへの よびとよめ
あさとびわたり ゆふづくよ
かそけきのへに はろはろに
なくほととぎす たちくくと
はぶりにちらす ふじなみの
はななつかしみ ひきよぢて
そでにこきれつ しまばしむとも
★桃の花が紅色に輝いているような顔に
立ちの中に青柳のような細い眉根を
笑い崩して 朝の姿を 映しつつ
少女が手に取る真鏡の二上山に
木の下を暗くして木木が繁る谷間を
鳴き響かせて朝を飛びうつり、
夕月のかすかな野辺に 遥かに鳴く
ほととぎすよ。それがくぐり飛ぶとて、
羽を振って散らす藤波のこころひかれて
引きよせて 袖にこきいれたことだ。
籐の花の色に、袖が染みるのなら染みるのが
よいと
大伴家持
巻19-4192