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御前にも、近うさぶらふ人々、はかなき物語するを
聞こしめしつつ、なやましうおはしますべかめるを
さりげなくもてかくさせたまへる御ありさまなどの
いとさらなるころなれど、憂き世のなぐさめには
かかる御前をこそたづね参るべかりけれど、
うつし心をばひきたがへ、たとしへなくよろづわすらるるにも
かつはあやし
★ 中宮彰子の周りに仕える女房達が、とりとめもない話を
するのをお聞きになりながら、(お身重)さぞお苦しくて
あられるだろうに、何気ない風に取り繕っていらっしゃる
ご様子など、ご立派な事は今更いうまでもないが、憂い
多きこの世のなぐさめには、このようなご立派な方の所を
探し求めてお仕えすべきであると、平常の心とはうって
変わって、たとえようもなく一切の憂いが消えるにつけても
一方では、そんな自分の心が不思議に思われる。
聞こしめしつつ、なやましうおはしますべかめるを
さりげなくもてかくさせたまへる御ありさまなどの
いとさらなるころなれど、憂き世のなぐさめには
かかる御前をこそたづね参るべかりけれど、
うつし心をばひきたがへ、たとしへなくよろづわすらるるにも
かつはあやし
★ 中宮彰子の周りに仕える女房達が、とりとめもない話を
するのをお聞きになりながら、(お身重)さぞお苦しくて
あられるだろうに、何気ない風に取り繕っていらっしゃる
ご様子など、ご立派な事は今更いうまでもないが、憂い
多きこの世のなぐさめには、このようなご立派な方の所を
探し求めてお仕えすべきであると、平常の心とはうって
変わって、たとえようもなく一切の憂いが消えるにつけても
一方では、そんな自分の心が不思議に思われる。
★秋のけはひたつままに、土御門殿のありさま、いはむかなくをかし。
池のわたりのこずゑども、鑓水のほとりの叢、おのがじし色づきわたりつつ、
おほかたの空も艶なるにもてはやされて、不断の御読経の声々、
あはれまさりけり。やうやう涼しき風のけはひに、
例の絶えせぬ水のおとなひ、夜もすがら聞きまがはさる。
★秋が深まるにつれて、藤原道長の邸は、言いようもなく風情がある。池のほとりのあちこちの枝、引き入れている細い水の流れのほとりの草むら、それぞれ一面に色づいて、この頃の空も、美しいのに引き立てられて、昼夜絶える事のない読経の声々、一段としんみり身に沁みる。次第に風も涼しくなると絶える事のない細い水の流れのせせらぎが、夜通し読経の声に混じり、聞こえてくる
池のわたりのこずゑども、鑓水のほとりの叢、おのがじし色づきわたりつつ、
おほかたの空も艶なるにもてはやされて、不断の御読経の声々、
あはれまさりけり。やうやう涼しき風のけはひに、
例の絶えせぬ水のおとなひ、夜もすがら聞きまがはさる。
★秋が深まるにつれて、藤原道長の邸は、言いようもなく風情がある。池のほとりのあちこちの枝、引き入れている細い水の流れのほとりの草むら、それぞれ一面に色づいて、この頃の空も、美しいのに引き立てられて、昼夜絶える事のない読経の声々、一段としんみり身に沁みる。次第に風も涼しくなると絶える事のない細い水の流れのせせらぎが、夜通し読経の声に混じり、聞こえてくる